日本における新エネルギーの取り組み

2025年6月9日

日本をはじめ世界中で、2050年のカーボンニュートラル達成のため再生可能エネルギーの導入が加速し、世界各国は大規模な再エネ投資を繰り広げています。そこでここでは、再生可能エネルギーの中から新エネルギーに焦点を当て、日本の取り組みを解説します。

新エネルギーとは

新エネルギーとは「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法(新エネルギー法)」で定められた概念で、太陽光発電やバイオマス発電などの再生可能エネルギーの中から特に普及を推進しているエネルギーのことです。日本政府は、環境保全やエネルギー自給率向上のため、新エネルギー導入を積極的に推し進めています。
新エネルギーは、「燃料分野」「熱利用分野」「発電分野」の大きく3つに分かれ、そこからさらに10種類に分けられます。燃料分野からバイオマス燃料製造、熱利用分野から太陽熱利用、温度差熱利用、バイオマス熱利用、雪氷熱利用、発電分野から太陽光発電、風力発電、バイオマス発電、中小規模水力発電、地熱発電の10種類です。

(図1)新エネルギーの定義(出典:エネ百科ホームページより) イメージ
(図1)新エネルギーの定義(出典:エネ百科ホームページより)

新たな動きが活発化している浮体式洋上風力発電

2050年のカーボンニュートラル達成に向けてクリーンなエネルギー調達方法が求められている中で、近年注目されているのが風力発電、特に「浮体式洋上風力発電」です。四方を海に囲まれた日本にとって洋上風力は脱炭素の"切り札"として期待されています。
浮体式洋上風力発電は風車を洋上に浮かべて発電する仕組みで、海底が深い場所でも設置できることから、次世代のエネルギーとして各国が導入に取り組んでいます。
浮体式では、深い海域では着床式洋上風力発電よりコストが低いことや、大規模な支持構造物を必要とせず、より広範囲な場所に設置が可能であること、海底環境に与える影響が小さいことがメリットです。
一方で、安全性確保のために、台風を含む風条件や、波、海潮流、水位といった海象条件、海氷、付着生物、地震などの災害、積雪にも配慮する必要があることや技術・コスト面で改善が必要であることなど、課題も多くあります。

(図2)出典:北九州市ホームページ イメージ
(図2)出典:北九州市ホームページ

日本政府は洋上風力発電を2040年までに設備容量ベースで原子力発電約40基分に相当する3000万〜4500万キロワットに増やす目標を掲げています。水深の深い海域が広い日本にとって浮体式の潜在能力は大きく、政府は浮体式の普及に向けて40年までの導入目標を新たに定める方針です。

日本が世界をリードする宇宙太陽光発電

宇宙太陽光発電システム(SSPS:Space Solar Power System)とは、宇宙空間で集めた太陽エネルギーを、地球上で電力として活用する新しいエネルギーシステムです。太陽が存在する限りエネルギーを生み出せるので"究極の再生エネルギー"として注目されています。
赤道上空、高度3万6,000kmの軌道上に発電衛星を浮かべ太陽光を集めて発電し、その電力をマイクロ波などの電波に変換して地上に送る仕組みで、発電衛星は太陽光パネルと送電アンテナを備えており「宇宙に浮かぶ発電所」とも呼ばれています。

宇宙太陽光発電のメリットとしては、地上が夜間でも安定して電力の供給ができること(ベース電源化)、枯渇しないエネルギー源のため24時間365日利用できること、天候や大気に影響を受けず、環境汚染も引き起こさないこと等が挙げられます。
デメリットとしては、初期費用が非常に高額なこと、大規模な太陽光パネルに対し、宇宙塵やスペースデブリへの対処が難しいこと、宇宙太陽光発電設備が故障した際の修理が困難なこと等が挙げられます。
日本政府は「宇宙基本計画」において、宇宙太陽光発電の実現に向け研究開発に取り組むことを明記しており、JAXAや経済産業省が宇宙太陽光発電の研究を進めてきました。2024年10月、宇宙システム開発利用推進機構により、京都大学の宇治キャンパスに設置した施設で、マイクロ波に変換された電気を送る実験が行われ、送電に成功しています。同年12月には高度7,000mを飛ぶ飛行機からの送電実験が行われ、この実験も成功し、空から電気を送ることができると証明されました。2025年には小型人工衛星からの送電実験を行うことになっており、成功すればいよいよ「宇宙から送電」が現実味を帯びることになるでしょう。

(図3)出典:経済産業省 製造産業局 宇宙産業室 一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構「宇宙太陽光発電における無線送受電技術の高効率化に向けた研究開発の概要(中間評価)」 イメージ
(図3)出典:経済産業省 製造産業局 宇宙産業室 一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構「宇宙太陽光発電における無線送受電技術の高効率化に向けた研究開発の概要(中間評価)」

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