2050年のカーボンニュートラルに向けた再エネ化の動きが活性化

2024年2月13日

日本政府が目指す「2050年のカーボンニュートラル」の実現に向けては、化石燃料による発電をバイオマス、風力、太陽光、地熱、水力などの再生可能エネルギー(再エネ)に置き換えていくことが重要だ。そのため、昨今、各企業はESG経営に力を入れ、再エネ化を図っている。

再エネ化率100%達成した製造業企業も

すでに国内企業において、再エネ化率100%を達成している企業もある。

エプソンは国内の製造業で初めて、2021年11月に国内拠点における使用電力のすべて(年間530GWh)を、再エネに切り替えた。これらは、水力や風力発電といった各地域における最適な再エネ電力の選択や、オンサイト発電(敷地内での再エネ発電)への積極的な投資などによるものだ。

さらに同社は、2023年12月に、グループ全世界の拠点におけるすべての使用電力を、再エネに転換した。フィリピンやタイ、中国では、工場の屋根にメガソーラーを設置。フィリピンでは、地熱と水力のミックス電力も採用する。インドネシアではバイオマス発電や地熱発電などを行い、再エネ化を図ったという。

フィリピン工場の屋根に設置されたメガソーラー(出典:エプソン) イメージ
フィリピン工場の屋根に設置されたメガソーラー
(出典:エプソン)

キリンビールも全工場・全営業拠点で購入する電力を2024年1月より再エネ100%にした。これによりキリンビール全工場・全営業拠点の温室効果ガスを年間約20,700t削減することになるという。なお同社では、全9工場に大規模太陽光発電設備を導入している。

そのほか、東京エレクトロンも2023年3月期に同社の国内グループ会社の全事業所において再エネ使用比率100%を達成した。これによるCO2排出量の削減量は約15万トンだという。

製造業以外でも、第一生命保険が2023年7月に、同社が事業活動で消費する電力(231,505千kWh)の100%再エネ化を達成したことを発表。東急不動産も2023年1月、同社事業所及び保有施設の使用電力を100%再エネに切り替えたことを発表している。

鉄道会社も再エネ化

鉄道会社においても再エネの導入が進んでいる。2023年12月、JR西日本は、関西電力および双日と、JR西日本専用の太陽光発電設備を設置し、そこで発電された再エネを、 JR京都線・神戸線といった近畿エリアの主要線区の列車運転用電力として導入することを発表した。再エネ電力供給線区は、JR京都線、JR神戸線、琵琶湖線、北陸線、山陽線、JR宝塚線、湖西線。再エネ電力導入規模は約50,000kWだという。電力の供給開始時期は、2026年度~2027年度中を予定している。

JR西日本、関西電力、双日がコーポレートPPAで合意。コーポレートPPAは、需要家と発電事業者が、新たに開発された再エネ電力の購入契約を結ぶ電力供給・調達方法 イメージ
JR西日本、関西電力、双日がコーポレートPPAで合意。コーポレートPPAは、需要家と発電事業者が、新たに開発された再エネ電力の購入契約を結ぶ電力供給・調達方法

西武鉄道も2024年1月1日から西武鉄道全線で使用するすべての電力を、実質的に再エネ由来の電力とし、実質CO2排出量ゼロで運行すると発表している。同社は2021年4月から山口線で西武グループが運営する「西武武山ソーラーパワーステーション」で発電する環境価値のついた電力での運行を開始している。これに加え今回、東京電力エナジーパートナーの再エネ電力メニューを導入することにより、環境価値がついた電力による通年・全路線・全列車での運行を実現し、年間約157,000tのCO2を実質ゼロにする。

またJR東海は、昨年の11月、東海道新幹線の「のり面」を活用した太陽光発電システムを導入することを発表している。太陽光パネルで発電した電気を最寄りの新幹線駅の照明等で活用する。施工開始時期は、2024年夏頃で、年間発電量は約270万kWhを想定している。

設置するパネルイメージ(出典:JR東海) イメージ
設置するパネルイメージ
(出典:JR東海)

自治体は民間企業との連携により再エネ化を推進

自治体においては、企業との連携により、再エネを推進する動きがある。

茨城県日立市は昨年の12月、日立製作所と「デジタルを活用した次世代未来都市(スマートシティ)計画に向けた包括連携協定」を締結した。

この協定により、「日立市中小企業脱炭素経営促進コンソーシアム」内に「地域GX推進分科会」を設立し、情報共有と施策の検討を行う。また、日立製作所 大みか事業所での取り組みを活かし、日立市が「中小企業脱炭素経営支援システム」を構築・運用することで、CO2排出量の見える化や削減のコンサルティング、削減策実行の支援なども行っていく。

そのほか、健診データ等に基づく将来の疾病リスク分析、その予防に向けた市でのさまざまな健康増進事業を連携させた一人ひとりの状態に合ったサービスの提案など、健康・医療・介護領域のデジタル化による「住めば健康になるまち日立市」の実現をめざし、住民の健康維持・増進のための施策におけるデジタル化の推進を図る。

また東急、東急バスは、昨年の12月、横浜市と「横浜市版脱炭素化モデル事業」の実施に向けた協定を締結した。

この協定では、田園都市線たまプラーザ駅北側に位置する次世代郊外まちづくりの活動拠点「WISE Living Lab」の敷地の一部に太陽光発電設備、蓄電池、モビリティ充電器などを設置し、発電した電力を活用して電動小型シェアモビリティを充電する。

「WISE Living Lab」外観(出典:東急) イメージ
「WISE Living Lab」外観
(出典:東急)

今後は、2025年度までに太陽光発電設備の設置を目指し、電動小型シェアモビリティ、蓄電池、モビリティ充電器などの設置も進めていく。

そのほか、住信SBIネット銀行やセールスフォース・ジャパン、島根銀行らは昨年の12月、林業・林政DXの実現およびカーボンニュートラルへの貢献に向け、安来市と協定書を締結した。この協定では、森林由来クレジットの創出及び販売の事業スキーム等の検証、林業に係る各種申請手続のDX化、林業プラットフォームの構築及び木材サプライチェーンのDX化を推進する。

住信SBIネット銀行は、昨年10月、カーボンクレジット事業および林業・林政DX事業を行う新会社「テミクス・グリーン」を設立した。

今後、他の自治体等とも協業し、林業DX事業及びカーボンクレジット事業のビジネスモデルを確立するとともに、森林由来以外のクレジット創出やカーボン・オフセット手法の確立等についても検討していくという。

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