クラウドからAIへの変化に対応した
IIJ 白井データセンター

2023年9月4日

昨今のクラウド移行やDX需要により、首都圏のデータセンター需要は旺盛だ。そんな中、インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)は、「白井データセンター」(千葉県白井市)2期棟の運用を、2023年7月に開始。プレス向けに設備を公開したので、紹介する。

2期棟では、データセンターで利用されるサーバCPUの最大消費電力が、今後300Wを超えることや、急拡大する生成AIのデータ処理に必要とされる、大量の電力を消費する画像処理装置(GPU:Graphics Processing Unit)搭載サーバの需要も増えると見込まれることから、10~20kW/ラックの電力需要に対応している。なお、白井データセンターの一期棟は2019年5月にオープンしている。

白井データセンター(出典:IIJ) イメージ
白井データセンター
(出典:IIJ)

白井データセンター 2期棟とは

白井データセンター 2期棟は、敷地面積約8,000平方メートル、最大受電容量10MW(メガワット)、1,100ラック規模の収容力がある。現在、そのうちの約50%のラックが提供可能で、2024年2月には100%のラックが提供可能になる予定だ。

白井データセンター2期棟概要(出典:IIJ) イメージ
白井データセンター2期棟概要
(出典:IIJ)

2期棟では、需要が拡大している自社サービス向け設備の収容スペースを拡張するとともに、プライベートクラウドを運用する企業やSI事業者、AI基盤などを設置するクラウドベンダーやコンテンツ事業者、さらに高い省エネ性能の再販用スペースを必要とするデータセンター事業者などの多様化するコロケーション(サーバ等のIT機器を設置するスペースを貸し出すサービス)ニーズに対応する。

データセンターに求められる新たなニーズ

IIJでは、1990年代からデータセンター事業を開始した。当初は、他のデータセンター事業者から借りての再販モデルだったが、2010年代からクラウドに最適化されたデータセンターが求められるようになったため、再販型から自社で建設する形態に切り替えた。ただ、数年前から、データセンターの新たな波が訪れたという。この点について、IIJ 基盤エンジニアリング本部 本部長の久保 力(くぼ いさお)氏は、次のように説明した。

久保氏:クラウド基盤の対応は一区切りついたと、2、3年前までは思っていましたが、2020年代以降、過去10年のクラウドの出現よりも大きな変化の波が押し寄せていると感じています。

具体的には、3つの変化があるという。

1つ目は、データセンターのマーケット自体が階層化されて、大規模なものから小規模なエッジコンピューティングまで、データセンターの形が多様化している点。

2つ目が、カーボンニュートラルへの対応が求められるようになった点。データセンターは、電力を大量に消費する施設ということで、データセンターとしてカーボンニュートラルへの対応が迫られている。

3つ目が一番大きな部分で、AIの普及だという。

データセンター市場の変化(出典:IIJ) イメージ
データセンター市場の変化
(出典:IIJ)

久保氏:ChatGPTみたいなものも急激に普及し始め、AI処理が、今後、これまで以上にコンピューティングリソースを大量に消費することは間違いなく、止められない流れだと思います。こういったものに対応していく必要があるところが、データセンターを巡る環境になります。

2期棟では、2つ目のカーボンニュートラルへの対応を、かなり意識しているという。

具体的な施策としては、まず、再生可能エネルギーへの対応がある。同社の松江データセンター(島根県)は、再生エネルギーの利用が100%となっているが、白井のほうは未達で、今後、非化石燃料による再生可能エネルギーによる電力比率を高めていく予定だ。

また、大容量の蓄電池を導入し、深夜電力を使って蓄電した電気を昼間使用し、ピークカットしたり、外気冷気を使って消費電力を抑えることで、カーボンニュートラルの実現を目指していく。

カーボンニュートラルへの対応(出典:IIJ) イメージ
カーボンニュートラルへの対応
(出典:IIJ)

蓄電池はピークカット用途だけでなく、社会に還元していくことにも利用する。すでに関西電力のアグリゲーターになっており、電力需要がひっぱくしているときには、蓄電池から電力を供給するように指令をもらい、電力を供給することも実際にやり始めている。今年7月には、2回ほど対応したという。

また、こういった取り組みを始めた際には、非化石証書(非化石電源で発電された電気から、「環境的な価値」を切り離して証書化したもの)を自前で調達する取り組みも始めている。

蓄電池の活用(出典:IIJ) イメージ
蓄電池の活用
(出典:IIJ)

3つ目のAIに関しては、計算能力が増えることによって、消費電力自体が増えてきているため、通常はサーバをファンで冷却しているが、空気だけでは冷え切らないため、水を使って熱を除去する(水冷)ことも考えていく。

これまで、白井データセンターでは、空調の消費電力を下げるため、外気冷却を中心におこなってきたが、AI時代を見据え、外気冷却と水冷をハイブリッドで動かす形に変えていく必要があるという。ユーザーからは、ラックあたり10kW、20kW使いたいというような高負荷案件のニーズも増えているため、そういったものに対応しながら、建築計画のある3期棟につなげていく予定だ。今後は、いかにユーザーニーズに迅速に対応できるかが、データセンタービジネス成功の鍵になるだろう。

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