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日本最大級の風力発電所を開発・運営するグリーンパワーインベストメントにとっての再エネとは?

2024年2月26日
話し手
  • 株式会社グリーンパワーインベストメント
  • 代表取締役社長
  • 坂木 満

グリーンパワーインベストメント(GPI)は、風力や太陽光発電をはじめとする、再生可能エネルギー(再エネ)の開発・建設・運営管理を行っている企業だ。今年の1月には、特別目的会社(SPC)であるグリーンパワー石狩を通じて保有する、日本初の8,000kW大型風車を採用した国内最大規模の商用洋上風力発電所である「石狩湾新港洋上風力発電所」の商業運転を開始した。カーボンニュートラルに向け、再エネの導入が加速している中、同社の現状と戦略を代表取締役社長 坂木 満(さかき みつる)氏に聞いた。

2024年1月1日から商業運転を開始した「石狩湾新港洋上風力発電所」(写真提供:株式会社グリーンパワーインベストメント)
2024年1月1日から商業運転を開始した「石狩湾新港洋上風力発電所」(写真提供:株式会社グリーンパワーインベストメント)

坂木さんと風力発電の出会いについて教えてください。

坂木氏:当時私が勤めていたトーメン(現豊田通商)は、1987年に日本人として最初の風力発電を米国カリフォルニア州 モハベ砂漠で開始するなど、再エネに関して非常に先進的な事業を行っていました。その中心となっていたのがユーラスエナジーホールディングスの創業者であり、当社の会長である堀俊夫です。当時自分は海外で油田開発を30年以上担当していたのですが、日本への帰国にあたり、堀から青森県での風力発電所の開発を一任されたのが再エネとの出会いになります。現在のように脱炭素化が問題になるずっと前の話です。

GPIは、2004年にユーラスエナジーホールディングスの創業者であり、GPIの現会長でもある堀俊夫氏を中心にトーメン社員らにより設立された。

風力発電所を開発していく上では、どういった点に留意していますか?

坂木氏:風力発電は、拠点を考えて開発することが重要だと考えています。地域あっての風力発電です。風力発電所は、地域の理解なしでは建設をすることも、運営を続けることもできません。資金や経験があるからといっても、「グリーンパワーインベストメントという名前の会社は聞いたことがないので、土地は貸せない」といわれたら、それで終わりです。そのため、いかに自治体や地域の人に理解していただくかというところがポイントです。われわれの事業というのは、地域の人からの信頼で成り立っています。その信頼を得るには、長い年月がかかります。

株式会社グリーンパワーインベストメント 代表取締役社長 坂木満氏
株式会社グリーンパワーインベストメント 代表取締役社長 坂木満氏

例えば、青森県の「ウィンドファームつがる」は2010年くらいから開発を始め、商業運転を開始したのが2020年です。10年かかっています。2010年に開発を始めたとき、つがる市にとっても「再エネって何?」「GPIって何?」という時代です。自治体に信頼を得るためには4~5年かかりました。

日本最大級の陸上風力発電所「ウィンドファームつがる」(写真提供:株式会社グリーンパワーインベストメント)
日本最大級の陸上風力発電所「ウィンドファームつがる」(写真提供:株式会社グリーンパワーインベストメント)

ただ、「ウィンドファームつがる」についてメディアでの報道が始まり、「GPIというのは信頼できる会社だ」ということがわかっていただけると、近隣地域も風力発電に興味を持っていただくことにつながります。その地域で信頼を得ることが、次の風力発電所の開発には大きなアドバンテージになります。

2024 年1月1日から商業運転を開始した石狩湾新港洋上風力発電所も同様です。開発は2007年からスタートしましたが、地域の皆様に事業についてご説明するために15年の時間をかけています。開発を始めて5~6年でできるわけではありません。信頼を得るための時間と忍耐が必要です。

風力発電の開発に時間がかかるのはなぜでしょうか?

坂木氏:自治体や地域の皆様にご説明させていただき、納得いただくまでには当然ながら時間がかかります。説得してはいけません。納得してもらわないと。説得するとボタンの掛け違いや、時には押し付けになってしまいます。納得してもらうための時間はとても重要で、それは人間関係、信頼関係につながります。

私は米国でも風力発電の開発に従事していました。米国では1案件について、30人ぐらいの地主との交渉となりますが、日本は300人以上になることもあります。土地の相続や登記簿など法制度も複雑ですし、所有者が海外に在住されている場合もあります。一番困るのは共有地で、1人でも承諾していただけない場合は、土地の利用は難しくなってしまいます。再エネの開発にはそういった超えるべきハードルがたくさんあります。

再エネの発電所ができることで、その自治体にはどういうメリットがありますか?

坂木氏:われわれは、地域産業としての再エネを実現したいと思っています。自治体に事業があるということは、税収や雇用につながる可能性があります。また、当社は売電収入の一部を協力金として地域に収めています。地域産業の一つとしての再エネが、将来世代が安心できる社会や環境を提供し、さらなる強みとなるようにしたいと考えています。

日本は豊かな自然に恵まれています。日本や世界が目指す脱炭素化のために自然の恵みを利用した風力や太陽光発電があることに気づいてもらえるといいと思います。東京の事業者が来て、発電の利益だけを持っていってしまうと考えがちですが、われわれは地域産業としての再エネを実現し地域の価値向上につなげるために、長い時間をかけて、地域の納得を得ながら共に働く、協働することを目指しています。

最近、企業も再エネの導入に積極的になっていますが、この流れは御社のビジネスにとってプラスに働いていますか?

坂木氏:われわれは、この事業を1987年くらいから行っています。もちろんFIT制度もないころですし、SDGsも脱炭素という世の中の流れもなかったように思います。今になって、「カーボンニュートラルの動きは追い風でしょう」といわれても、あまりピンときません。 風力発電の開発は完成までに17~18年かかり、その間は利益を生むこともありません。
利益を生まないビジネスを続けてきた理由はなにか?それは、日本のエネルギー危機をなんとかしたい、豊かな自然を持つ地域を何とかしたいというパッションです。Made in Japanのエネルギーをどう作るのかという問題とプラス地域振興です。われわれにとって、風力発電事業と地域振興は大きな2つの柱です。

風力発電は東北、北海道が多い気がしますが、これらの地域が風力発電に有利なのでしょうか?

坂木氏:風力発電事業は風が強いところが有利です。洋上風力は陸上よりも規模が大きく、場合によっては陸上の10倍です。ただ、洋上はコストが高くなります。地形が変わらない限り、年平均風速は一緒で、平均風速を計算し、そこでどれだけの売上があるのかというのは簡単な掛け算です。風力発電の原料は風で、製品は電気です。これを必要とする人と20~30年の契約ができれば、その間の収益が計算できます。それが将来の売上の担保になり、銀行が投資をしてくれます。これがプロジェクトファイナンスの仕組みです。

これからは、やはり北海道が有望だと思います。北海道は風が強い。現状は送電線の問題などがありますが、将来を睨めば、北海道に力を入れることを考えています。基本は風が吹くところがどこかということです。

昨年、御社の株主がNTTアノードエナジーおよびJERAに変更されました、事業環境に変化はありますか?

坂木氏:NTTアノードエナジーもJERAも2050年のカーボンニュートラルに向け、再エネに力を入れており、再エネに対する思想のベクトルはGPIと同じです。
われわれは、風力発電を通じた地域振興をやろうとしていますが、自社だけでは限界があります。NTTグループは全世界に約900社の会社があり、世界中にICTサービスを提供するグローバル企業です。日本においては、ICTを軸足にして一次産業、二次産業、三次産業、あるいは災害対策を行っており、多方面にわたり高度なノウハウをお持ちです。そのノウハウは当社事業に大きな進化をもたらしてくれると思います。 一番分かりやすいのはO&M(オペレーション&メンテナンス)分野です。ドローンの活用やバードストライクを避ける研究もされています。発電事業と同じく当社の重要な業務である地域振興についても同様です。われわれが支援するつがる市でのメロンの水耕栽培事業には、すでにNTTの技術が活用されています。また、風車建設予定地でもある岩手県の宮古市はNTTと協働で電力会社を作り、「再生可能エネルギーの地産地消」を推進しています。地域の未来を一緒になって考える仲間が増えたことは嬉しい限りです。

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