日本の自然に溶け込む新エネルギーの開発
四方を海に囲まれた日本は、豊富な水資源や四季のある温暖な気候など、さまざまな自然の恩恵を受けている。新エネルギーの活用においても、そうした自然がもたらす力を活かすべきだろう。そこで、最近は生活環境に与える影響が少ない洋上での風力発電や、波の力を電気に変える波力発電などに関する実証実験が立ち上がっている。また、過酷な自然環境にも耐えうる太陽電池の開発も進んでいるようだ。ここでは、そういった新エネルギー開発関連のニュースを紹介する。
洋上風力発電所の商用運転が開始
SMFLみらいパートナーズ、グローカル、合人社グループ、コトブキ技研工業、中国電力、リニューアブル・ジャパンは、浮体式洋上風力発電所の所有ならびに安定的な運用を目的に「ひびきフローティングウィンドパワー合同会社(HFWP)」を設立。2025年4月22日に、「ひびき灘沖浮体式洋上風力発電所(福岡県北九州市響灘沖)」の商用運転を開始したと発表した。浮体式洋上風力発電所の商用化は国内で2基目になるが、鋼製バージ型浮体としては国内初になるという。バージ型浮体とは、浮体構造物の水中に浸かっている部分の深さが浅いため、水深が浅い場所でも設置できるのが特徴の浮体だ。
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、低コストかつ日本の気象・海象条件に適合した堅牢な浮体式洋上風力発電システムの技術確立・検証を目的とし、2014年より「次世代浮体式洋上風力発電システム実証研究(バージ型)」の開発を進めてきた。グローカルは、2024年3月末の実証研究終了の後、NEDOより設備一式を引き継いでいる。
「ひびき灘沖浮体式洋上風力発電所」は水深50m~100mの海域での運用を想定している。2019年5月から現在の海域に設置され、実証運転を実施しながら設備そのものの評価や検証に加え、効率的な保守管理技術の開発が進められてきた。なお、本発電所で発電した電気は、「再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)」を活用して九州電力送配電に全量売電される。

(写真1)響灘沖に浮かぶバージ型浮体式洋上風力発電所
(出典:ひびきフローティングウィンドパワー合同会社 プレスリリース)
海の力を活用する波力発電設備の実証実験を実施
新規事業開発を支援するゼロワンブースターは2025年4月7日、再生可能エネルギーの研究開発を行うYellow Duckが開発する波力発電装置に関する実証実験を実施し、再生可能エネルギーの導入拡大における海洋再生エネルギーの有効性を検証したと発表した。
海洋再生可能エネルギーの有効性確認と実用化に向けた課題抽出を目的とした実験では、富山県射水市の伏木富山港新湊地区において、2024年12月12日~14日の3日間にわたり波力発電設備を港湾施設に設置。発電量や稼働時間などの技術的検証を行い、海洋の波エネルギーを利用してクリーンエネルギーを生成することに成功した。波力は太陽光発電の出力が低下する雨天・曇天時、および夜間にも発電できることから、天候や時間帯における変動を補完する新たな再エネ電源として期待できることが確認されたという。
Yellow Duckは本実験をきっかけに、発電効率の向上とさらなる安全性および耐久性の確保など、設備の実用化に向けた開発を加速させるとともに、広大な海の利活用に向けた取り組みを強化していく。また、今季実施した伏木富山港、博多漁港、大阪南港での実証実験をもってシードステージの技術開発を完了し、沖合での運用に向けた「浮体型波力発電装置」の開発に進んでいくとのことだ。

(写真2)実証機器の設置の様子
(出典:ゼロワンブースター プレスリリース)
過酷な自然環境にも耐える太陽電池の実証
積水化学工業および積水ソーラーフィルム、沖縄電力、ユニチカの4社は2025年4月16日、台風や塩害など耐候性において過酷な環境である沖縄県宮古島市において、防草シートに設置したフィルム型ペロブスカイト太陽電池の共同実証研究を2025年3月18日から開始したと発表。
太陽光発電は新エネルギーの主力電源と見られているが、日本は平地面積が少なく従来のシリコン系太陽電池では適地が限られることが課題として挙げられている。軽量で柔軟という特徴を持つフィルム型ペロブスカイト太陽電池ならば、従来は設置が難しかった場所に簡易に適用できる可能性が高まることから、新エネ導入量を拡大できる有力な選択肢として期待されている。
台風や塩害の被害を受ける地域の多い日本全体で新エネルギーを拡大させるため、耐候性においてとりわけ過酷な環境である沖縄での台風や塩害などによる影響を評価することも必要であることから、沖縄県内で初めてとなる実証実験が開始された。実験では、沖縄県宮古島市の台風や塩害の影響が大きい地点で、積水化学製フィルム型ペロブスカイト太陽電池をユニチカ製防草シートへ設置し、耐風および耐塩害の評価を中心に検証する。設置規模は約10㎡で、実証期間は2025年3月18日より約1年間となる。今後は実証結果を基に、フィルム型ペロブスカイト太陽電池の耐候性能の改善や、防草シートとペロブスカイト太陽電池との簡易設置・施工方法などを確立し、ペロブスカイト太陽電池の適用拡大を目指す。

(写真3)設置完了したフィルム型ペロブスカイト太陽電池
(出典:積水化学工業、積水ソーラーフィルム、沖縄電力、ユニチカのプレスリリースより)
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