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「IT化」から「都市運用の自動化」に向かうインドのスマートシティ

2026年3月23日

人口規模の大きさと成長率の高さだけで語られがちなインドだが、近年の変化の本質は「物理インフラの再設計」と「デジタル公共インフラの全国実装」が同時に進んでいる点にある。道路や鉄道、港湾、空港、電力といった基盤のボトルネック解消を狙う巨大投資が加速する一方で、国家レベルのデジタル基盤が民間の競争と革新を誘発している。さらに、多言語や低コスト、大規模需要というインド固有の特徴が、AI活用の波を公共サービスから産業現場にまで広げつつある。

日常業務での活用を中心にAIを導入

インドのスマートシティ構築を促進しているのは、都市刷新政策やモバイル決済の導入、デジタルIDの普及、そして都市課題の規模の大きさである。その中でAIは、カメラやセンサー、衛星画像、市民通報、行政データといった多様な入力・意思決定に直結する形へ変換する「実務のエンジン」と位置づけられている。

また、インドの都市の交通や道路、上下水、警察、消防、衛生などの現場データの相互依存が強く、共通の地理情報(GIS)を軸に資産台帳を整備し、苦情受付や工事発注、検査、支払いまでをデジタルに対応させる設計が進んでいる。そこでもAIは、優先順位付けや巡回ルートの最適化、再発地点の特定といった予算配分の合理化などの役回りを担っている。

一方、インドではスマートシティの課題も明確で、監視カメラ解析の誤検知、データ品質のばらつき、プライバシーへの懸念、そしてAIの判断を現場が実行できる体制(人員・契約・保守)の不足がボトルネックになりやすい。したがって最新の取り組みとしては、道路補修や駐車、清掃のような、地味だが毎日発生する業務にAIを組み込んで運用しながら、効果を生み出そうとしているようだ。

道路管理をAIで行うスーラト市

グジャラート州のスーラト市は、人口増加と交通量の増大、さらに雨季の影響による路面損傷が重なり、道路の維持管理の効率化が大きな課題になっている。従来の道路管理は、巡回員の目視点検や住民からの通報、部局ごとの紙台帳に依存しており、損傷の見落としや対応の遅れ、同じ地点が何度も掘り返されるなど、非効率だった。そこで注目されているのが、AIを用いて道路状態を面で把握し、補修の優先順位付けと執行管理を高速化するアプローチだ。

スーラト市では市内に設置された約4300台のCCTVカメラとAIを連携させ、道路のくぼみや亀裂、陥没、路肩の崩れ、工事後の復旧不良といった補修対象の候補をリアルタイムで自動抽出している。そして、抽出結果をGIS上の道路資産台帳と重ね、位置・規模・交通量・周辺施設を加味して補修の優先度を算定する。そのデータを担当部署や請負業者の作業指示と連携させることで、意思決定の速度と説明可能性が向上した。

また、インドでは雨季明けに、道路の補修工事候補が一気に増える傾向がある。そうした場合でも、損傷の深さや面積、事故リスク、幹線道路か生活道路かというような属性をスコア化して工事の優先順位を付けることで、限られた予算と人員での道路の維持管理が可能になる。さらに、補修工事が上下水道や通信インフラの掘削工事などと衝突しないように、市全体の工事計画や道路占用許可のデータと接続できれば、同一路線での連続掘削を避けやすい。こうした部局横断の調整コストを下げることも、実質的なインフラ強靭化につながる。

(図1)スーラト市はインド北西部にある港湾都市で、2025年の人口は全国で9番目に多い約690万人(ワールドメーターによる統計)と見られている(地図出典:Googleマップ) イメージ
(図1)スーラト市はインド北西部にある港湾都市で、2025年の人口は全国で9番目に多い約690万人(ワールドメーターによる統計)と見られている(地図出典:Googleマップ)

駐車場をAIで管理するコーチン市

ケーララ州のコーチン市は、中心市街地の道路幅が限られている一方、商業や観光、港湾機能などが集積し、短時間の停車需要が高い。それによって、駐車場の探し回りが渋滞を生み、二重駐車が公共交通の定時性を落とし、歩行者の安全性が損なわれるなどの課題があった。そこでコーチン市は、AIを活用した駐車管理システム「ParKochi」を導入。駐車場の出入口にカメラを設置し、ナンバープレートを認識して入出庫を自動記録することで、満空情報をリアルタイムに更新している。

コーチン市は「空き状況の把握」だけではなく、「不正・違反の抑止」「需要予測にもとづく誘導」など、交通流そのものを整える施策に取り組んでいる。例えば、路上の駐車指定区画でも、映像解析で占有状況や滞留時間を推定すれば、過時間駐車や指定外駐車を検知しやすくなる。さらに、AIが時間帯や曜日、天候、イベント、近隣施設の稼働などから推定し、混雑が見込まれるエリアでは事前に代替駐車場へ車を誘導する。アプリや街頭サイネージなどを通じて、満車の場所へ車が集中する前に分散させれば、中心部の走行速度低下を抑えられる。料金設計と組み合わせれば、短時間回転を促す価格最適化や、公共交通への乗り換えを促進するパークアンドライドの設計にもつながる。

AI駐車管理の導入は、取り締まりや罰金の徴収、市民対応などの一体化にも期待されている。決済をデジタル化し、領収・免責・返金のルールを明確にして異議申し立ての仕組みまで整えることで、誤認識による課金トラブルにも備えられる。コーチン市のように観光客が多い都市では、多言語対応やサポート体制も含め、運用の丁寧さもAI導入の成否を左右するだろう。

(図2)コーチン市はインド南西部にある港湾都市で、2025年の人口は全国で12番目に多い約510万人(ワールドメーターによる統計)と見られている(地図出典:Googleマップ) イメージ
(図2)コーチン市はインド南西部にある港湾都市で、2025年の人口は全国で12番目に多い約510万人(ワールドメーターによる統計)と見られている(地図出典:Googleマップ)

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