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洋上浮体型データセンターは実現するのか? 5者が共同実証
生成AIやクラウドサービスなどの普及により、世界中でデータセンターの需要が急増している。一方で、データセンターの電力消費の増大や建設用地の不足といった課題も深刻化している。こうした中、昨年の3月、日本郵船、NTTファシリティーズ、ユーラスエナジーホールディングス、三菱UFJ銀行、横浜市の5者が連携し、横浜港において再生可能エネルギー100%で稼働する洋上浮体型データセンターの実証実験を行うと発表した。

洋上浮体型データセンター イメージ図(出典:日本郵船)
データセンターを海上に設置するというアイデアは、データセンターの立地問題と脱炭素化の両立を目指す新たなインフラモデルとして注目を集めている。
実証における各社の役割
プロジェクト全体を統括する日本郵船は、新規事業としてデータセンター事業を開始し、洋上浮体型のデータセンターの構築については、2022年から活動を開始した。この構想に対して、早期にNTTファシリティーズが共鳴し、風力事業者のユーラスエナジーホールディングスのほか、三菱UFJ銀行、カーボンニュートラルポートを推進する横浜市の賛同を得て実証実験を開始した。
本実証においては、NTTファシリティーズが洋上浮体型データセンターの設計・構築・安定運用の技術検証を行い、ユーラスエナジーホールディングスは、再生可能エネルギー100%で運用するオフグリッド型データセンターの技術検証を行う。そして、三菱UFJ銀行が金融知見やネットワークを活用した次世代データセンターに関する事業共創、および関連事業に係る金融支援の検討、横浜市は、カーボンニュートラルポートの形成に向けたリーディングポートとして、海域での再生可能エネルギーを活用したデータセンターの検討を行う。また同市は、大さん橋ふ頭での陸上電力供給設備への導入を含めて、災害時における再生可能エネルギーや蓄電池等の活用の検討を行う。
横浜港で始まる洋上データセンター実証の概要
洋上浮体型データセンターの実証実験は、横浜市の大さん橋ふ頭に設置されている浮体式施設「ミニフロート」を活用して行われている。ミニフロートは、海上イベントや災害時の利用などを想定して設置された浮体構造物で、長さ約80メートル、幅約25メートルの規模を持つ。

実証実験のイメージ図(出典:日本郵船)
今回の実証では、このミニフロート上にコンテナ型データセンターを設置し、さらに太陽光発電設備と蓄電池を組み合わせることで、再生可能エネルギー100%で稼働するデータセンターの運用を検証する。実証は2025年秋頃から約1年間実施される予定で、海上環境における設備の耐久性や運用の安定性などが検証され、洋上環境でも長期安定的に稼働できることを実証する。
特に重要な検証項目となるのが、塩害環境における機器の耐久性、再生可能エネルギーによる電力供給の安定性、そして洋上環境での長期運用の実現性だ。これらの検証結果は、将来の洋上データセンターの商用化に向けた重要な知見となる。
海上に設置するメリットとは
洋上浮体型データセンターが注目される理由の1つは、陸上では確保が難しい大規模な設置スペースを海上で確保できる点にある。都市近郊の海域を利用することにより、通信遅延を抑えながら都市圏に近い場所にデータセンターを配置することができる。
また、再生可能エネルギーとの親和性の高さも大きな特徴だ。将来的には洋上風力発電と組み合わせることで、発電した電力を直接データセンターに供給することが可能になると期待されている。
さらに、海水を利用した冷却システムを導入することで、サーバー冷却に必要なエネルギーを削減できる可能性もある。データセンターでは冷却に多くの電力を消費するため、冷却効率の向上は運用コスト削減と脱炭素化の両面で重要な意味を持つ。
そのほか、建設とエネルギーコストの低減・工期の短縮が達成されるほか、仮にその場所での市場ニーズに沿わなくなった場合には、ニーズに合う場所に移動させることも可能だ。
一方で、実証では洋上環境がサーバーに与える影響、保守・メンテナンスの問題、津波や地震などの災害への対処といった懸念を払しょくしていくことが重要になる。
産官連携によるオープンイノベーション
今回の実証プロジェクトは、異なる分野の企業や自治体が連携するオープンイノベーションの取り組みとしても注目されている。
横浜市は、100%再生可能エネルギーで稼働する洋上浮体型データセンターが、運用時に温室効果ガスを排出しない、カーボンニュートラル社会の実現に大きく貢献する新たなスタンダードの1つとなることを期待している。
洋上浮体型グリーンデータセンターが実現すると、今後の有望な再生可能エネルギーである洋上風力発電を効率的に利用することができる。将来的には、洋上浮体型データセンターを洋上風力発電所の近くに立地し、発電された電気をデータセンターで活用することで、陸上の電力系統に依存・制限されることなく、生み出された再生可能エネルギーを最大限活用することを目指していく。
「日本オープンイノベーション大賞」の総務大臣賞を受賞
こうした産官連携による先進的な取り組みが評価され、2月9日、この洋上浮体型データセンターの構想は「日本オープンイノベーション大賞」において総務大臣賞を受賞。デジタルインフラの拡大と脱炭素社会の実現を両立する取り組みとして、その社会的意義が高く評価されている。
日本オープンイノベーション大賞とは、イノベーション創出の迅速な社会実装や多主体連携の促進を目的とした内閣府の取り組みだ。
審査員は、この取り組みに対して、「脱炭素対応とデータセンター需要急増への対応を両立して進めることの社会的意義は大きい」、「各業界を代表する企業が連携して取り組むことの事業規模・社会的インパクトは非常に大きい」とコメントしている。
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