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石狩市、再生可能エネルギーの地産地消による「地域循環共生圏」の実現へ

2024年2月13日

北海道石狩市では、地域の再生可能エネルギーを上手に使い、地域で作ったエネルギーを地域で使う「エネルギーの地産地消」を通じて環境を守るのと同時に、地域を元気にする、「石狩版地域循環共生圏」の構築を目指している。「石狩版地域循環共生圏」は、二酸化炭素の排出を減らしながら、地域の発展も実現する取り組みだ。

2040年度の事業イメージ(出典:石狩市) イメージ
2040年度の事業イメージ
(出典:石狩市)

「石狩版地域循環共生圏」を推進する事業体制としては、石狩市が事業統括として地域関係者との連絡・調整、事業体への参画等を行い、北海道電力が電源開発促進の協力、再生可能エネルギー関連産業育成支援・連携、地域密着型ビジネス開発支援・連携、情報提供等を実施する。また、金融機関、再生可能エネルギーや運輸系企業が資金を提供、電源開発・供給、公共交通サービスを提供する。

なお、石狩市と北海道電力は、2019年に再生可能エネルギー発電事業等に関する地域連携協定を締結している。この協定では、再生可能エネルギー(洋上風力発電、バイオマス発電など)の開発促進に向けた協力体制の構築、石狩湾新港地域「REゾーン」(再生可能エネルギーゾーン)の実現に向けた手法の検討や再生可能エネルギーの利活用を軸とした産業の育成の検討、地方創生につながる地域密着型ビジネス等の実現方策の検討を両者が協力して取り組む。

石狩市では、「石狩版地域循環共生圏」の実現に向け、地元でできた再生可能エネルギーを使えるエリアの確保、物流産業や情報産業が出すCO2の削減、CO2を削減できる公共交通サービスの拡大という3つの施策を行う。

再生可能エネルギーを使えるエリアの確保

再生可能エネルギーを使えるエリアの確保では、石狩湾新港地域内に設定したREゾーン約100haに、地域の再生可能エネルギーの大量供給を実現することにより、産業の脱炭素化と、再生可能エネルギーによる事業活動を進めようとする産業の集積を実現する。また、 地域内の再生可能エネルギーを供給する自営線や再生可能エネルギー変電所の施設整備により、REゾーンへの再生可能エネルギーの託送供給を行うため、特定送配電事業会社を北海道電力と連携して設立した。

REゾーン(出典:石狩市) イメージ
REゾーン
(出典:石狩市)

石狩湾新港花畔(ばんなぐろ)埠頭においては、太陽光発電、蓄電池及び自営線を構築する。これにより、一般送配電系統からの電力供給が途絶えた時に、港湾エリアに設置した太陽光発電や蓄電池等による地域供給を行い、港湾機能として欠かすことのできない港湾荷役機械や埠頭内の電力供給施設などの機能維持を図る。

さらに、エネルギーの長期保存が可能な水素も活用した地域マイクログリッド(厚田マイクログリッド)を構築。地域に設置した太陽光発電や蓄電池等により、地域の学校、道の駅などの公共施設に再生可能エネルギーを供給する。また、一般送配電系統からの電力供給が途絶えた時には、このシステムにより製造した水素による発電も併用し、地域の指定避難所である学校等に電力供給を実現する。

厚田マイクログリッドシステム図 イメージ
厚田マイクログリッドシステム図

そのほか、石狩市の再生可能エネルギーの確保に向け、JERAおよびグリーンパワーインベストメントが、グリーンパワー石狩を通じて保有する、日本初の8,000kW大型風車を採用した国内最大規模の商用洋上風力発電所である「石狩湾新港洋上風力発電所」の商業運転を2024年1月1日より開始した。

1月1日から稼働した「石狩湾新港洋上風力発電所」 イメージ
1月1日から稼働した「石狩湾新港洋上風力発電所」

物流産業や情報産業が出すCO2の削減

石狩湾新港地域には、「物流産業」やデータセンターといった「情報産業」が集まっているため、このような産業から出るCO2も増えている。そこで、データセンターで使う電気を再生可能エネルギーにしたり、電気や水素で動くトラックを増やし、こうした産業から出るCO2を減らしたりすることを目指している。

その一環で、石狩市は同市内でデータセンターを運営するさくらインターネットと2021年9月、「デジタルトランスフォーメーションの推進及び脱炭素等のイノベーションによる地域活性化に関する包括連携協定」を締結した。この協定により、両者は石狩データセンターの脱炭素化を含めた相互協力の枠組みを検討していく。

包括連携協定書を手にした加藤 龍幸 石狩市長(右)とさくらインターネット 代表取締役社長 田中 邦裕氏(左) イメージ
包括連携協定書を手にした加藤 龍幸 石狩市長(右)とさくらインターネット 代表取締役社長 田中 邦裕氏(左)

CO2を削減できる公共交通サービスの拡大

石狩市では、バスが通っていなかったり、本数が少なく使いにくかったりする場所があるため、自家用車中心の車社会になっている。そこで、再生可能エネルギーで作った電気や水素で動くバスなどを使って、地域に新しい交通サービスを広げることを目指している。

これに向けた取り組みとして同市では、オンデマンド交通「いつモ」の実証実験を2022年10月~2023年3月まで行った。

オンデマンド交通はIoTやAI技術を活用し、タクシーの利便性と路線バスの効率性を兼ね備えた新しい交通手段。「いつモ」では、既定の経路や時刻表がなく、利用者の予約に応じて、最適なルートでバスを運用するというもの。実証実験は買い物客を想定した「市内オンデマンド」と通勤客を想定した「通勤オンデマンド」の2種類を実施した。

「いつも」の予約アプリ イメージ
「いつも」の予約アプリ

「市内オンデマンド」では、路線バスのバス停、コンビニの前、スーパーマーケットの前、郵便局前等を停留所とし、エリアの停留所を予約客に応じて、変動ルートで運用。

「通勤オンデマンド」は、路線バスのバス停を停留所として、事前にルートを定め、予約された停留所のみを最短ルートで運用した。利用客に行ったアンケートでは、8割以上の人が「満足」と回答している。
今年度も「通勤シャトル・乗継便」、「市内オンデマンド」として、2023年9月から2024年3月まで、実証実験を行っている。

今後は、利用動向や必要とされるサービスレベルを明確にし、ニーズへの対応、利便性、持続性を確立するために多角的な検証を行い、地域に根差した持続可能な交通サービスとして導入を目指す。

「石狩版地域循環共生圏」の経済効果

2040年に「石狩版地域循環共生圏」を実現した場合の経済効果としては、二酸化炭素排出削減として17,862tを見込んでいる。この数字は、約3,670世帯分の排出量に相当する。また、再生可能エネルギーの利用量は26.6 GWh/年で、この数字は約7,650世帯分の排出量にあたる。

そのほか、地域のサービス事業体設立を通し、再生可能エネルギー電力100%ゾーンの創出に伴い新たな企業誘致の実現に伴い創出される従業員の雇用、北海道胆振東部地震のブラックアウトの経験を踏まえた電力等のライフラインの確保、公共交通空白地帯への新交通サービスの展開を目指している。

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