ゴルフ場や宿泊施設でも急速に導入が進むEV充電インフラ
日本政府は2035年までの乗用車新車販売において、すべての車をEV(電気自動車)に置き換えるという目標を掲げている。その目標を達成するため、2030年までにEV用充電器を15万基(急速充電器:3万基、普通充電器:12万基)設置すると宣言しており、助成金の支給を本格的に始めた。これに、自治体からの助成金も合わせて使用することで、民間施設にとってもEV充電インフラ導入の初期費用が大幅に抑えられる。
利用者のニーズに応えてEV充電インフラの導入が進むゴルフ場
EV用充電器を設置する場所としては、自宅や町中のEVスタンド、サービスエリアなどの施設以外にも、施設内で充電できることが来客者の増加につながると思われる、商業施設や宿泊施設などにも注目が集まっている。その中でも、特にゴルフ場は市街地から離れた立地にあり、ゴルフクラブなどの用具の持ち運びも伴うため、自家用車での長距離移動が必須だ。また、ゴルフ場の利用者には、高級車や輸入車と合わせてEVユーザーも多いという。
こうしたことから、ゴルフ場を選ぶ際にEV充電設備があるかどうかが重視され始めているという。ゴルフ場としても、ESG経営の観点から環境意識が高いケースが多く、EV充電インフラを積極的に導入していることが外部へのアピールにもなる。
2023年2月6日には、ゴルフに関するオンラインメディアの運営をはじめ、ゴルフ用品の販売からゴルフ場の予約などの事業を手がけるゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)とエネチェンジが、EV用充電器の設置拡大で協業すると発表した。GDOは自らが管理するゴルフネットワークを利用し、登録会員に対してEVシフトに関するアンケート調査や情報発信を行う。また、1,900コース以上のゴルフ場に対してエネチェンジのEV用充電器の設置を提案しながら、ゴルフ場における脱炭素化の推進とSDGsの観点からゴルフ場の価値向上を図っていくという。
また、4月19日には、全国の36都道府県で171ヵ所のゴルフ場と26ヵ所の練習場を運営するアコーディア・ゴルフが、テラモーターズのEV充電インフラ「テラチャージ」を151ヵ所(ゴルフ場144ヵ所、ゴルフ練習場7ヵ所)に導入すると発表。テラモーターズは2022年6月に、ゴルフ場向けにEV充電インフラを100基無償提供すると発表したが、反響が大きかったことから8月にはゴルフ練習場への100基の無償提供に加え、さらに追加でゴルフ場と練習場に計100基を無償提供すると発表している。
こうした反響について、テラモーターズは「ゴルフは自然環境の中で行われるスポーツであるため、施設側の環境意識が極めて高いことが影響している」と見ている。
集客効果の向上や差別化のためにEV充電インフラの設置を進める宿泊施設
一方、家族などで訪れるために自家用車での利用が多くなる観光地での宿泊施設でも、業界をあげてEV充電インフラを充実させる取り組みが進んでいる。EVで長距離を移動してきた宿泊者にとっては、宿泊施設に滞在している間に充電できるのは非常にありがたい。宿泊施設にとっても、EV充電インフラを充実させることが集客効果の向上や差別化にもつながる。
最近では、世界最大級の宿泊予約サイト「ブッキング・ドットコム」をはじめ、外資系の宿泊予約サイトで「EVの充電スタンド」という検索フィルターが続々と追加されているという。宿泊先でEVを充電したいという動きは日本でも加速しており、2022年11月8日には楽天グループがエネチェンジとパートナーシップ契約を締結。今後は「楽天トラベル」に登録されている国内の宿泊施設約40,000軒を対象に、エネチェンジのEV用充電器の設置を働きかける。
今回のパートナーシップ締結の背景には、楽天トラベルが実施した「旅行・観光におけるサステナビリティへの意識調査」でも、旅行者の多くが「CO2の削減や節電・省エネへの取り組み」を宿選びの参考ポイントに挙げるなど、社会全体のサステナビリティへの関心の高まりがあるという。
(図1)楽天トラベルとエネチェンジが設置拡大を進める、共同ブランドのEV用充電器のイメージ
(出典:楽天グループのプレスリリースより)
2023年5月15日には、都道府県旅館ホテル生活衛生同業組合47組合および支部旅館ホテル組合約1,500組合、さらに旅館・ホテル約15,000軒(組合員数)によって構成される、日本最大級の宿泊施設組合「全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)」が、アウディ ジャパンとの協力を発表。EVの目的地充電インフラ整備に関して、双方で協力して設置を推進することに合意した。
両者は2023年末までに、アウディ純正のEV用充電器(8kW)を1ヵ所につき2基無償提供し、全国で50ヵ所100基のEV用充電器設置を目指していくという。
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