スタジアムを楽しむための混雑緩和ソリューション

2023年7月24日

大規模なスタジアムは大勢の人が集まるため、混雑緩和の対策が必須だ。特に、試合終了後には人々が一斉に駅などに向かって移動するため、正しく誘導しないと事故も起きかねない。一方、スポーツ観戦やイベントに参加した際には、トイレや売店の混雑も気になる。現在スタジアムでは来場者の満足度向上のために、AIやIoT技術を活用して混雑状況が可視化できる、さまざまな取り組みが進められている。

待ち時間に応じたポイント配布で試合終了後の混雑を緩和

ノエビアスタジアム神戸では、デンソーテン、神戸大学、楽天モバイルによって、イベント時の混雑緩和方策の検討ならびにイベント会場周辺の経済活性化を目的とする実証実験が2021年10月に行われた。実証実験では、試合終了後、帰宅者が集中する「時間」と「場所」を分散することで混雑緩和の実現を目指し、専用スマートフォンアプリで会場周辺の混雑状況が確認できるようにした。

さらに、専用アプリでは会場内での待ち時間に応じてインセンティブ(ポイント)が付与され、ポイントはグッズ販売店や会場周辺の提携店舗で使用可能なクーポンに交換できた。

(図1)混雑緩和の実証実験のスキーム(出典:デンソー・神戸大学・楽天モバイルのプレスリリースより引用)
(図1)混雑緩和の実証実験のスキーム
(出典:デンソー・神戸大学・楽天モバイルのプレスリリースより引用)

こうした実証実験を経て、ノエビアスタジアム神戸を本拠地とするサッカーチームであるヴィッセル神戸は、2022年7月より「Check-in~ピーク時間を避けてお得に帰宅!~」のサービスを開始している。このサービスでは、ヴィッセル神戸のホームゲームに来場した際にアプリでチェックインし、帰宅をピーク時間より遅らせると、地域の対象店舗で使用できるクーポンと引き換えられるポイントが貯まる。このように、帰宅時の寄り道を促進させることで、試合終了後の混雑緩和を図るとともに会場周辺の経済活性化にも貢献しようとしている。

(画面1)実証実験に使われたアプリのイメージ(出典:デンソー・神戸大学・楽天モバイルのプレスリリースより引用)
(画面1)実証実験に使われたアプリのイメージ
(出典:デンソー・神戸大学・楽天モバイルのプレスリリースより引用)

トイレの混雑状況をスマホで可視化

観客の入場制限を緩和したJリーグだが、主催者には引き続き高いレベルでのコロナ感染対策が不可欠となっている。そこで、J1サッカーチームである川崎フロンターレは岡谷エレクトロニクスとともに、スタジアム内に3密が発生しないための仕組みとして、AIを活用した「トイレ利用状況可視化システム」を開発した。

「トイレ利用状況可視化システム」は、川崎フロンターレのホームスタジアムである等々力陸上競技場内のトイレ個室に設置された約100個の開閉センサーの情報を、アステリアが開発したIoTソフト「Gravio」で収集。その情報をWeb上のモバイルサイトに掲載することで、来場者は個室の利用状況や混雑状況をスマートフォンを使ってリアルタイムに確認できる。

(写真1)スタジアムのトイレドアに設置されたIoTセンサー(出典:川崎フロンターレの公式Webページより引用)
(写真1)スタジアムのトイレドアに設置されたIoTセンサー
(出典:川崎フロンターレの公式Webページより引用)

これに伴い岡谷エレクトロニクスは、アステリアとともに等々力陸上競技場で開催されたJリーグ2022シーズン全試合(12試合)の来場客に「スタジアム内施設の混雑状況に関する意識調査」を実施し、その結果を公開した。

(画面2)トイレの利用状況が分かるモバイルサイトのイメージ(出典:川崎フロンターレの公式Webページより引用)
(画面2)トイレの利用状況が分かるモバイルサイトのイメージ
(出典:川崎フロンターレの公式Webページより引用)

調査に参加した404人の回答から、観客席から混雑状況を知りたい割合は78%、そのうちの97%が試合中や休憩中など、トイレが空いているタイミングでの利用を希望していることが分かった。また、混雑状況の確認に利用するツールについての調査では、スマートフォンが82%、案内モニターが57%、オーロラビジョンが25%となり、観客は手軽かつ自分のタイミングでスマートフォンで混雑状況を確認したいニーズが高いことが分かった。

「トイレ利用状況可視化システム」の導入については、利用者の72%から導入の支持を得ることができた。さらに、今回の調査では、トイレに限らず授乳室などの混雑する可能性があるエリアの状況も確認したいという回答も寄せられ、多様なエリアで混雑状況を事前確認するニーズがあることが分かったという。

(図2)トイレの混雑状況が確認できるツールに関するアンケートの結果(出典:アステリアのプレスリリースより引用)
(図2)トイレの混雑状況が確認できるツールに関するアンケートの結果
(出典:アステリアのプレスリリースより引用)

売店の混雑状況を掲示板で可視化

富士通はサッカースタジアムにおいて、AIを活用して混雑状況を可視化することで、来場者の利便性向上を図る実証実験を実施すると発表した。富士通と富士通サービスが実証実験を行うのは、ドイツのプロサッカーリーグであるブンデスリーガに所属するアイントラハト・フランクフルトのホームスタジアム「ドイチュ・バンク・パルク」で、混雑状況の可視化と合わせて、芝生への散水効率向上の実証実験も2023年度まで実施される。

混雑可視化の実証実験では、富士通のAIを活用したプラットフォーム「Fujitsu IoT Operations Cockpit」が、スタジアムに設置された既存のIoTセンサーの情報を収集して活用。これによって、スタジアム内各所に設置された掲示板に売店の混雑状況をリアルタイムに可視化し、来場者の利便性向上を目指す。

一方、デジタルによる効率的な散水システムの実証実験では、水分センサーで記録された土壌の水分と日光の照射割合のデータを、長距離無線規格「LoRaWAN」を介して「Fujitsu IoT Operations Cockpit」に送信。そのデータに、天気予報などの情報を組み合わせてAIが分析し、スタジアムの芝生およびスタジアム周辺の緑地への最適な散水を実行し、効率的に資源を利用するという。

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