地方自治体のデジタル人材不足を企業のDX人材で解決

2023年8月7日

今やDXの活用は、国や企業だけではなく地方自治体にも広がっている。そこでは、デジタル技術を活用した新しい地域づくりから行政システムの構築、地域産業の振興など、官民や業種、地域の枠を超えたスマートコミュニティ実現の取り組みが進められようとしている。一方で、地方自治体におけるデジタル人材不足の課題解決にも、国の支援が進んでいるようだ。

総務省の支援制度で企業が地方自治体にDX人材を派遣

地方自治体においては、デジタルを活用することがさまざまな課題解決につながることは理解できても、実際にデジタルに精通した人材を採用することが難しい。そこで総務省は、三大都市圏に所在する企業などの社員がそのノウハウや知見を活かし、地方自治体において地域独自の魅力や価値の向上、地域経済の活性化、安心・安全につながる業務に期間限定(6カ月?3年間)で従事する「地域活性化起業人制度(企業人材派遣制度)」を制定。地方自治体と企業が協力して、地方圏への人の流れを創出できるよう支援している。

(図1)地域活性化起業人制度の概要(出典:総務省の公開資料より)
(図1)地域活性化起業人制度の概要
(出典:総務省の公開資料より)

地域活性化起業人制度は、2014年度から始まった「地域おこし企業人制度」が、2021年度に大幅リニューアルされたもの。人件費も、年間最大560万円まで特別交付税で支援される。

派遣する民間企業にとっても、社会的貢献に加えて人材の育成、キャリアアップ、事業拡大の可能性などのメリットがあるため、積極的に派遣元になろうとするケースも少なくない。2022年度は252社が全国368市町村へ618人を派遣しており、コロナ禍前である2019年度の65団体95人からおよそ6倍に増えている。

DMMからDX推進アドバイザーを受け入れスマートコミュニティ実現を目指す鹿島市

佐賀県鹿島市は2023年5月1日、DMM GAMESのプラットフォーム事業やゲームパブリッシング事業、コンテンツ事業、海外事業、投資事業を行うEXNOAと、地域活性化起業人制度に関する協定を締結したと発表。この協定によって、幅広く事業を展開するDMMグループでEXNOAが培ってきたノウハウやテクノロジーを活用し、鹿島市民の利便性の向上や庁内業務の効率化など、DX推進の具体的な施策を展開していくという。

EXNOAから鹿島市へ派遣された地域活性化起業人(1名)は、「DX計画に基づく具体的な施策の立案」「庁内業務の効率化」「行政手続のオンライン化」「シティプロモーションの強化」「地域情報化」といった業務に従事する。

(図2)地域活性化起業人を派遣したEXNOAと鹿島市の協定イメージ(出典:鹿島市の公開資料より)
(図2)地域活性化起業人を派遣したEXNOAと鹿島市の協定イメージ
(出典:鹿島市の公開資料より)

また、鹿島市は7月10日、こうしたDX推進の取り組みの一環として、全庁で生成AI(Chat GPT)の活用に向けた実証を行うと発表。トラストバンクが提供する自治体専用ビジネスチャットツール「LoGoチャット」に、Chat GPTを連携させたサービスを活用する。これによって、すべての職員が普段業務で使用しているチャットツールにおいて、文章作成や文章の要約、誤字脱字のチェック、アイデア創出などにChat GPTを活用できるようにする。

地域活性化起業人制度の活用で続々と進むスマートコミュニティの取り組み

6月27日には鹿児島県肝付町と出光興産及び同社の子会社ソーラーフロンティアが、地域活性化起業人に関する基本連携協定を締結。肝付町は7月1日より出光興産から派遣社員を受入れ、ソーラーフロンティアと共に培ってきたノウハウを活用して、エネルギー地産地消型のカーボンニュートラルの実現に向けた総合的な対策を推進する。

地域活性化起業人の具体的な業務としては、「エネルギーの地産地消による地域課題の解決及び地方創生に貢献できる取り組みに向けた事業の企画立案・実行支援」「脱炭素化に向けた計画づくりの作成・支援」「脱炭素社会へ向けた事業の企画立案・実行支援」「脱炭素社会へ向けた意識啓発、情報発信」などに関わる。

同じ6月27日には、静岡県藤枝市もヒトカラメディアと地域活性化起業人を活用した協定を締結。これまで、ベンチャーやスタートアップを中心としたオフィス移転支援やコワーキングスペース、シェアオフィスの運営など働く場づくりを進めてきたヒトカラメディアは、今回藤枝市に地域活性化起業人を派遣することで、首都圏の拠点と藤枝市内の拠点とのつながりを強化する。これによって、関係人口の増加や、新ビジネス創出、藤枝市内企業のさらなる成長の支援につながる取り組みを促進していくという。

その他にも、7月4日には千葉県南房総市がクラブツーリズムと協定を結び、観光プロモーション課に配属された人員が観光施策の企画などを行うと発表。7月12日には三重県伊勢市が、NECの社員をデジタルコーディネーターとして登用したと発表するなど、全国で地域活性化起業人制度を活用したスマートコミュニティの推進が加速しているようだ。

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