10年以内にAGIの世界がやって来る ― ソフトバンク 孫 正義氏

2023年11月20日

ソフトバンクは、10月3日から10月6日まで、ハイブリッド形式で「SoftBank World 2023」を開催。2日目の10月4日には、基調講演でソフトバンクグループ 代表取締役 会長兼社長執行役員 ソフトバンク 創業者 取締役の孫 正義(そん まさよし)氏が、今後、訪れるであろうAGIの世界について熱く語った。

基調講演を行うソフトバンクグループ 代表取締役 会長兼社長執行役員 ソフトバンク 創業者 取締役の孫 正義氏 イメージ
基調講演を行うソフトバンクグループ 代表取締役 会長兼社長執行役員 ソフトバンク 創業者 取締役の孫 正義氏

AGIの世界とは

AGI(Artificial General Intelligence)とは、「汎用人工知能」とも訳され、特定のタスクだけでなく、あらゆるタスクが人間と同等のレベルで行える人工知能を指す。孫氏は、全人類の英知の10倍を持つAIが、10年以内に登場すると語った。

AGI(Artificial General Intelligence)の世界が10年以内に来ると孫氏は指摘(出典:ソフトバンク) イメージ
AGI(Artificial General Intelligence)の世界が10年以内に来ると孫氏は指摘
(出典:ソフトバンク)

孫氏:AIが人間の英知を全部の分野で抜いてしまう。これがAGIのコンセプトです。何を聞いても、AGIは人間の英知よりも優れているという状況に達した時点、これがAGIを達成したということになります。僕のイメージは、人類の英知の総和の10倍くらい優れているという英知に達した時に、もはや疑う余地もないAGI達成ということだと思います。

同氏は、AGIの世界になると自動車は自動運転になり、交通事故も大幅に減ると語った。

孫氏:自動車が事故を起こすのは、人間が運転しているからです。これがAGIの世界になった時には、人類の英知以上になるわけですから、事故が起きない交通機関、モビリティが完成します。ゼロにはならないかもしれませんが、少なくとも1万分の1ぐらいに減ります。そうすると、より安く、より安全に、より確実に、より早く物が届けられ、モビリティがAGIによって置き換わっていきます。

また、AGIの世界では、需要と供給のマッチングが行われ、不良在庫がない秒単位のジャスティン・タイムが起き、カスタマーサービスにおいては、相手の問題に寄り添った、より人間らしいサービスが実現されるという。さらに、投資の世界では、「私はお金持ちになりたい」と一言いえば、AGIが口座を開いて、取引をして、成果を届けてくれるようになると同氏は述べた。

同氏は、最近のAIの進化には2つの要因があると指摘した。1つは生成AIのアルゴリズムの進化。もう1つは、ハードウェアが圧倒的なニューラルエンジンを持つに至ったことだという。

AIを使わないのは、電気を使わないのと同じ

最近はChatGPTが大きなブームとなっているが、同氏は講演の中でChatGPTの業務利用を制限しようとする日本企業の現状に警鐘を鳴らした。

孫氏:ChatGPTは何回もテレビにも、新聞にも、雑誌にも出ているのに、それを毎日活用していない。それは電気を否定するとか、自動車を否定するというような人です。電気が生まれて約150年、自動車が生まれて約150年。電気を使わなかった国、自動車を使わなかった国が、現在の社会からどれだけ取り残されたのか。あるのに手をつけてない、手に入るのに手をつけていない。そんな人生観でいいのですかと私は問いたい。後で歴史があなたの間違いを証明します。

孫氏が示した米国と日本のChatGPTの利用率。データはMM総研が日本および米国の企業・団体に所属する従業員13,814人(日本 13,412人、米国 402人)を対象に、2023年5月末にWebアンケート調査を実施し、まとめたもの(出典:ソフトバンク) イメージ
孫氏が示した米国と日本のChatGPTの利用率。データはMM総研が日本および米国の企業・団体に所属する従業員13,814人(日本 13,412人、米国 402人)を対象に、2023年5月末にWebアンケート調査を実施し、まとめたもの
(出典:ソフトバンク)

同氏は、ソフトバンクを世界で最もAIを活用するグループにしようとしており、この数カ月でAIに関する特許を1万件出願したという。

孫氏:われわれソフトバンクグループは、日本で一番多くのユーザーとのタッチポイントを持っています。ソフトバンクモバイルで4,000万ユーザー、LINEで9,500万ユーザー、Yahoo!で8,500万、PayPayで5,800万。もちろん重複している人はたくさんいますが、これらすべてでAGIの世界を目指して、データトレーニングを行い、インファレンスする(情報から結論を導き出す)方向に持っていきたいと決意しています。

ソフトバンクを世界で最もAIを活用するグループにしようとしている(出典:ソフトバンク) イメージ
ソフトバンクを世界で最もAIを活用するグループにしようとしている
(出典:ソフトバンク)

次の10年には人間の英知の1万倍のAIが登場

10年以内にAGIが訪れるとすると、その次の10年はどうなるのか。孫氏は、人間の英知の1万倍を持つAIが誕生すると語った。

孫氏:その次の10年は10倍ではなく、1万倍くらいになります。10倍優れているのであれば、まだ人間の方が賢いと言いたい人がいるかもしれない。ただ、1万倍の世界になると、もはや議論の余地はありません。1万倍というのは、人間対猿ではなく、人間対金魚です。金魚のニューロンは人間の1万分の1です。

20年以内に全人類の英知の1万倍を持つAIが誕生すると孫氏は語った(出典:ソフトバンク) イメージ
20年以内に全人類の英知の1万倍を持つAIが誕生すると孫氏は語った
(出典:ソフトバンク)

そして最後に孫氏は、AIを活用するのか、しないのかは、強い願望を持っているかどうかで決まると述べ、講演を終えた。

孫氏:人類生命体が生まれて40億年の歴史の中で、シンギュラリティが来るのはこの10年間です。われわれは、まさにその10年のクロスオーバーの時にいます。このクロスオーバーの10年で、自分がどう思うのか、自分の会社がどう思うのか、自分の国がどう思うのかで、その後の100年、200年が決まります。小さな議論はやめて、もっとでっかく全体を見ようということを僕は申し上げたい。AIの世界。これを拒否するのか、積極的に受け入れるのか、これから決定的な差が出てきます。AIは最強の味方だ、最強のパートナーだ、最強の道具だと思って、あらゆる進化を遂げていくことです。活用するのか、取り残されるのか、金魚になりたいのか、なりたくないのかということです。人類の進化の源泉は願望にあると私は思います。空を飛びたい、早く走りたい、病気を治したい。この願望が進化の源泉でした。AGIの世界が来たら、それをうまく活用できる人とできない人の最大の違いは、何かの強い願望を持っているかどうかです。

孫氏が講演で使用した約60枚のスライドの中で、重要な1枚だと語った金魚の写真(出典:ソフトバンク) イメージ
孫氏が講演で使用した約60枚のスライドの中で、重要な1枚だと語った金魚の写真
(出典:ソフトバンク)

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