国内のEV普及に向けた現状の課題と政府が実施する施策とは
中国、欧州、米国を中心にEVが拡大
国際エネルギー機関(IEA)は4月23日、「世界EV見通し2024」を発表した。それによると、2023年における世界の電気自動車(EV)の新車販売台数(乗用車のみ)は、前年比35%増の1,380万台で、伸び率は前年の54%増を下回ったが、全新車販売台数に占めるEVの比率は18%と、前年の14%から拡大した。
IEAは、EVが普及している理由として、気候変動対策、石油依存に対する経済安全保障上のリスク回避、イノベーションの3つを挙げた。

2021~2024年の地域別(中国、ヨーロッパ、アメリカ、世界のその他の地域)電気自動車四半期販売台数
(出典:IEA)
2023年のEV販売台数を主要国・地域別にみると、中国が前年比37%増の810万台と最も多く、欧州が22%増の330万台、米国が40%増の139万台となった。中国は同年の世界のEV販売台数の60%近くを占め、続く欧州の約25%、米国の10%を合計した上位3ヵ国・地域での販売が世界全体の約95%を占めた。
IEAは、2024年の世界のEV販売台数を前年比23%増の1,700万台と予測。新車市場全体に占める割合は5分の1を超える見通しを示した。
日本でなぜEVが普及しないのか
一方国内に目を向けると、日本自動車販売協会連合会のデータによれば、2023年のEVの新車販売台数(軽自動車を除く)は43,991台で、前年比で1,392台増。新車販売台数全体におけるEVの構成比は1.7%で前年から0.1%の微増となっている。EVの構成比は、2020年が前年比0.2%減、2021年が前年比0.3%増、2022年が前年比2.5%増となっており、中国や欧州のような大幅増には至っていない。

2023年の燃料別登録台数統計(出典:日本自動車販売協会連合会)
今年に入って国内の新車販売(軽自動車を除く)におけるEVの構成比は、1月は1.1%、2月は1.2%、3月は1.5%、4月は1.0%と、いずれも1%台となっている。
このようなデータを見ると、日本政府が掲げる2035年までに新車販売の100%を電動車にするという目標は、かなり高いハードルのように思える。
日本におけるEVの普及率は、2024年の時点で新車販売全体の約1.9%程度と推測され、この数値は、普通乗用車のEVが約1.2%、軽自動車のEVが約3.3%という内訳だという。
日本においてEVが普及しない要因としては、充電インフラの不足やEVの購入価格がガソリン車と比べて高いこと、航続距離が短く、充電に時間を要すること、充電インフラの標準化などが挙げられている。
充電インフラの整備はEV普及の鍵となる要素だが、日本では十分とはいえず、特に地方部では充電ステーションの整備が遅れている。
EVの車両価格は、日産「リーフ」の新車価格が408万1,000円~、軽自動車の日産「サクラ」は254万8700円~、三菱「eKクロス EV」は 254万6500円~など、ガソリン車に比べると高い。
航続距離はガソリン車に比べて短く、日産「リーフ」の航続距離は、バッテリー容量が40kWhのモデルで322km。EVは市内を走る分には問題ないが、旅行などの長距離は不安という声をよく聞く。また、充電時間が長く、急速充電器を使っても30分程度、普通充電の場合は数時間かかる。そのため、急速充電器の普及やバッテリー技術のさらなる進化が求められている。
加えて、急速充電を多用すると、バッテリーの劣化を早める懸念もある。そのため国土交通省は、電気自動車のバッテリーを長持ちさせるための動画を、YouTubeで公開している(電気自動車を快適に使用するために)。この動画では、①常時満充電にしない、②頻繁に急速充電を行わない、③長期間、充電をせずに放置しないなど、バッテリーの特性を踏まえた適切な充電方法や管理方法を理解することが重要だとアドバイスしている。
EV普及に向けた施策
このような課題を解決すべく、政府はさまざまな施策を行っている。
充電インフラについては当初、2030年までに公共用の急速充電器3万基を含む充電インフラ15万基を設置する目標であったが、これを倍増し、30万基を設置すべく、2023年10月に指針を発表している。

「充電インフラ整備促進に向けた指針」(出典:経済産業省)
これを後押しすべく、「V2H充放電設備/外部給電器」の導入補助金も給付している。
V2H充放電設備のV2Hは「Vehicle to Home」を指し、V2H充放電設備は、電気自動車・プラグインハイブリッドに蓄えられた電気を、家庭で利用できるようにした設備のこと。

「V2H充放電設備/外部給電器」の導入補助金(出典:経済産業省)
自治体では、東京都が新築建築物にEV充電設備の設置を義務づける改正環境確保条例を都議会で可決・成立。EV充電設備の設置義務化は全国初で、2年間の周知期間を経て2025年4月に施行されることが決まった。2025年度以降に建設される新築マンションには駐車台数のうち、2割以上の充電設備を設置することが義務付けられる。
EVの購入に対して政府は補助金を出しており、2024年度は1,291億円の予算を確保。車種により異なるが、1台あたり最大で85万円の補助となっている。自治体も補助金を出しており、東京都の場合は1台あたり最大45万円で、自動車メーカー別の上乗せ補助額もあり、こちらは最大10万円となっている。
税制面でも優遇しており、重量税が無税のほか、自動車税はグリーン化特例により75%程度軽減される。さらにEVの技術開発を促進するため、自動車メーカーや関連企業に対して研究開発補助金が提供されている。

次世代モーター、電池に対する支援(出典:経済産業省)
EV普及では日本は世界に遅れをとっているが、国内最大手のトヨタ自動車は2026年までに新たに10モデルのEVを投入し、年間150万台を販売する事業計画を発表している。紹介したような政府の後押しなどもあることから、今後の国内でのEVの普及が期待される。
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