脱炭素経営とは?企業が実施するメリットや進め方、事例を紹介

2024年2月26日

脱炭素経営とは、「気候変動対策(≒脱炭素)の視点を織り込んだ企業経営のこと」と環境省は定義している。

企業が脱炭素経営を実践するには、地球温暖化の要因とされるCO2の排出量を把握して削減目標を定め、計画を立てて実行することが重要となる。

本記事では、脱炭素経営の意味や3つの枠組み、日本企業による実施状況、進め方やメリット、事例を紹介するので、ぜひ参考にしてほしい。

脱炭素経営とは

脱炭素経営とは イメージ

脱炭素経営の定義について、環境省のホームページでは次のように記載されている。

脱炭素経営とは、気候変動対策(≒脱炭素)の視点を織り込んだ企業経営のこと。

引用:脱炭素経営とは|環境省

従来、企業による気候変動対策はCSR活動の一部として実施されていた。しかし、今や地球温暖化など気候変動への対策は人類共通の課題となっている。

そこで、企業規模を問わず、気候変動への対応策を経営上の重要課題と捉え、取り組むことが求められている。

これまで気候変動対策にはコストがかかると見なされていたが、現在は見方が変わり、成長につながる未来への投資と考えられるようになった。企業にとって脱炭素は「新たなビジネスチャンス」と捉えられ、大企業を中心に脱炭素経営が推進されている。

脱炭素経営が求められる理由

脱炭素経営が求められる理由として、カーボンニュートラルを実現するために不可欠である点が挙げられる。カーボンニュートラルとは、CO2を代表とする温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること。日本は2050年までにカーボンニュートラルの達成を目指している。

国内だけでなく、現在カーボンニュートラルを目指すグローバル企業が増加しており、取引時に脱炭素化の方針へ適応するよう求められるケースが見られる。また脱炭素経営を積極的に取り組む企業を政府や自治体が補助金などで支援したり、金融機関が融資の判断材料として評価したりする傾向もある。

今後、企業活動の持続可能性のためには、企業規模にかかわらず脱炭素経営の実践がより重要視されるだろう。

関連記事
カーボンニュートラルとは?日本や世界の動向、取り組みの具体例も紹介

環境省が提示する3つの枠組み

環境省のホームページでは、脱炭素経営を推進するための取り組みとして3つの枠組みを提示している。

これらの枠組みを活用し、脱炭素に向けた目標を経営戦略に織り込み実行することで、脱炭素経営の実現に近づくので参考にしてほしい。

脱炭素経営に向けた3つの枠組み
TCFD ・気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の略称
・開示された企業の気候変動に関連した財務情報を、金融機関などが適切な投資判断につなげるための枠組み
・ガバナンス、戦略、リスクマネジメント、指標と目標などの項目の開示が推奨されている
SBT ・Science Based Targetsの略称で、パリ協定が求める水準に準拠した、企業が設定すべき温室効果ガスの排出削減目標
・サプライチェーンにおける排出量の削減が求められる
RE100 ・100% Renewable Electricityの略称で、事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーで調達するための国際イニシアチブ
・2024年1月時点で、日本企業は84社が参画している

中小企業における脱炭素経営の実施状況

中小企業における脱炭素経営の実施状況 イメージ

2023年11月にフォーバルGDXリサーチ研究所が報告した中小企業の脱炭素経営に関する調査から、実施状況を見てみよう。同調査によると、脱炭素経営に「十分取り組めている」と回答した中小企業経営者はわずか4.0%だった。「ある程度取り組めている」は42.8%で、半数以上が「全く/あまり取り組めていない」と回答している。

これまで脱炭素経営は、大企業を中心に取り組みが行われてきた。しかし中小企業は日本全体の温室効果ガス排出量のうち1〜2割(1.2億〜2.5億トン)を占める。

気候変動対策はサプライチェーン全体で取り組むことが重要となるため、中小企業は脱炭素化の進め方やメリットを把握し、経営戦略に織り込んで推進する必要がある。

参考:中小企業の脱炭素経営|フォーバルGDXリサーチ研究所

脱炭素経営の進め方

脱炭素経営の進め方 イメージ

脱炭素経営の進め方を、環境省発行の「中小規模事業者向けの脱炭素経営導入ハンドブック」に基づき3つのステップで紹介する。

1. 情報を収集して方針を検討する
2. CO2排出量を算定する
3. CO2排出量の削減計画を策定・実行する

ステップ1「情報を収集して方針を検討する」

まずは、脱炭素経営にまつわる情報を収集して方針を検討しよう。インターネット検索や脱炭素経営に関するセミナー参加などを通して、次の情報を集めると良い。

● 業界のカーボンニュートラルの目標値
● 業界の取り組み事例
● 地方自治体の動き
● 脱炭素化に関する消費者のニーズ
● 脱炭素経営で使用できる補助金

収集した情報に基づき、自社に最適な方針を検討して経営方針に織り込んでみよう。

なお、脱炭素経営で使用できる補助金に関しては、以下の記事で詳しく紹介しているので参考にしてほしい。

関連記事
【令和5年度】カーボンニュートラル(脱炭素)に関する14の補助金一覧

ステップ2「CO2排出量を算定する」

次に、自社のCO2排出量を算定しよう。ステップ1で定めた方針を具体的な施策へ落とし込むには、自社のCO2排出量を把握する必要がある。

電力やガス、灯油などエネルギー別で月ごとの使用量に係数(活動量あたりのCO2排出量)を掛けることで、CO2排出量を算定できる。

<CO2排出量の算定式>

活動量×係数=CO2排出量

すべての事業所におけるCO2排出量を調べ、分析することで対策を具現化していこう。

ステップ3「CO2排出量の削減計画を策定・実行する」

ステップ2でCO2排出量を把握できたら、実行可能な対策をリストアップしていこう。短中期的には省エネ対策に取り組み、長期的にはエネルギー転換や再生可能エネルギーの調達を検討すると良い。具体的な対策例は、次のとおり。

短中期的な省エネ対策の例
運用方法の改善 ・空調機の清掃
・配管の空気漏れを改善
・不要時間帯の消灯
・冷暖房の設定温度の調整
部分的な更新 ・ガラスやブラインドなどの設置で窓の断熱性を改善
・照明のタイマーやセンサーの活用
・蒸気配管の断熱対策
・空調のスケジュール運転管理
新設備の導入・入れ替え ・LED照明の導入
・高効率な機器(変圧器、冷凍設備、給湯器など)の導入
長期的なエネルギー転換・再生可能エネルギーの調達の例
エネルギー転換 ・工業炉に水素を活用
・バイオマスの活用
・ガソリン・ディーゼル車から電気・水素自動車への転換
再生可能エネルギーの調達 ・太陽光発電設備の設置
・PPA事業(売電事業)の展開
・再生可能エネルギーの電力を購入

株式会社ミライト・ワンでは、太陽光発電システムの導入支援サービスや、売電事業の展開ができるグリーンエネルギー事業の構築サービスを提供している。詳細は、以下のサイトを参考にしてほしい。

太陽光発電システムのエンジニアリング&サービス
グリーンエネルギー事業

脱炭素経営を実施するメリット

脱炭素経営を実施するメリット イメージ

脱炭素経営の実施は、気候変動対策となるだけでなく経営面でもメリットがある。ここでは以下の5つのメリットを見てみよう。

● 競争力を高められる
● エネルギーコストを削減できる
● 企業イメージが向上する
● 人材獲得で有利になる
● 資金調達で有利になる

競争力を高められる

脱炭素の世界的な潮流に乗ることで、企業の競争力強化につながる。脱炭素経営を行わなければ、取引先から選ばれなくなるケースが今後は増えていくだろう。

現在は温室効果ガスを大量に排出する事業者のみ、対応が法律で義務付けられている。しかし、将来的に対象範囲が広がった場合でも、あらかじめ脱炭素経営を実施しておくことで即座に対応できるようになる。また、環境に配慮した新しいビジネスモデルの確立で、差別化につながる点もメリットのひとつと考えられる。

日本企業に義務付けられているカーボンニュートラルへの対応に関して、以下の記事で詳しく解説している。ぜひ参考にしてほしい。

関連記事
カーボンニュートラルの実現を目指す企業の取り組みや具体例を紹介

エネルギーコストを削減できる

脱炭素経営に取り組む一環で、エネルギーを無駄に消費しているプロセスが改善されれば、光熱費や燃料費を削減できる。

政府の補助金を活用すれば、大きな負担なく高効率な設備や再生可能エネルギーシステムなどの導入も可能になる。エネルギー消費の効率性が高まり、長期的に見るとコスト削減につながるだろう。

企業イメージが向上する

脱炭素経営を先駆的に進めることで、メディアで取り上げられたり自治体などから表彰されたりして、企業イメージや認知度アップにつながる。

中小企業による取り組みの事例数は比較的少なく、目立ちやすいのでPR活動にもなる。その結果、売上拡大に貢献する可能性があるだろう。

人材獲得で有利になる

脱炭素に向けた取り組み内容を継続的に発信することで、気候変動に関心のある人材から評価が高まり、優秀な人材獲得につながる点もメリットのひとつ。

また「地球環境にやさしい会社で働いている」という意識が社員にもそなわり、モチベーションアップが期待できる。

資金調達で有利になる

脱炭素経営を推進することで、資金調達で有利になったり融資条件が優遇されたりする動きが見られる。企業はESG(環境・社会・ガバナンス)に関する情報を積極的に開示することで、金融機関や投資家から評価されやすくなっている。

これからの時代、脱炭素の視点を経営戦略に織り込むことができなければ、資金調達に影響を与える恐れもあるので、企業は一刻も早い対応が必要だろう。

脱炭素経営の取り組み事例6つ

脱炭素経営の取り組み事例6つ イメージ

脱炭素経営を実践する企業の取り組み事例として、今回は次の6つを紹介する。

● 再生可能エネルギーの調達|ワタミエナジー株式会社
● 脱炭素経営でエネルギーコストを削減|株式会社大川印刷
● 脱炭素経営による認知度向上で取引増加|株式会社パブリック
● 再生可能エネルギーへ切り替え|株式会社エコ・プラン
● モノづくりにおける環境負荷を低減|株式会社村田製作所
● 店舗やサプライチェーンで温室効果ガス排出量を削減|株式会社ファーストリテイリング

なお、脱炭素経営を実践する企業の取り組み事例については、次の記事もチェックしてみてほしい。

関連記事
国内外に貢献するカーボンニュートラルやエネルギーマネジメントの取り組み

再生可能エネルギーの調達|ワタミエナジー株式会社

ワタミエナジー株式会社は、再生可能エネルギーの普及を目指し「再エネ100プラン」を提供している。

「再エネ100プラン」では、お客様の使用電力量と同じ環境価値が紐づけられている。使用する電気が実質的に再生可能エネルギー100%となり、電気を使用する際のCO2が実質ゼロになる仕組み。

「再エネ100プラン」の導入拡大に伴い、事業用途の安定した電源を確保するために株式会社ミライト・ワンと提携。ミライト・ワンが静岡県富士宮市に建設した太陽光発電サイトからグリーン電力を買い取ることで、ワタミグループ全体の「RE100」の実現を目指している。

再生可能エネルギーの調達|ワタミエナジー株式会社 イメージ

参考:グリーン電力の調達により、安定した再エネプラン販売を実現|MIRAIT ONE

脱炭素経営でエネルギーコストを削減|株式会社大川印刷

株式会社大川印刷は、ソーシャルプリンティングカンパニー®(社会的印刷会社)というパーパス(存在意義)を掲げながら、長年にわたり脱炭素経営を実践している。

具体的には、消費電力の削減につながる印刷機による省エネ対策や、自社の工場屋根に太陽光発電設備を設置。再生エネルギーに切り替えることで、2019年には前年比で売上が8%伸び、エネルギーコストは8%の削減につながった。

参考:中小規模事業者のための脱炭素経営ハンドブック|環境省

脱炭素経営による認知度向上で取引増加|株式会社パブリック

廃棄物の収集運搬事業などを展開する株式会社パブリックでは、地域の環境保全に貢献する脱炭素経営を推進している。環境に関する情報を収集することで、今後は脱炭素経営への転換が必須であることを認識したという。

同社ではCO2排出量を拠点ごとに算定し、排出量が多い拠点に重点を置いてCO2削減に向けた取り組みを行った。その結果、脱炭素経営を実践する企業として認知度が向上し、取引が増加。また継続的な発信によって社員のモチベーション向上につながった。

参考:中小規模事業者向けの脱炭素経営導入 事例集|環境省

再生可能エネルギーへ切り替え|株式会社エコ・プラン

業務用空調のメンテナンスや省エネコンサルティングサービスなどを提供する株式会社エコ・プランは、再生可能エネルギーへの切り替えに取り組んでいる。

環境経営に関するイニシアチブに参画しながら社内のリテラシーを高め、外部の投資家や金融機関から評価を受けるまでになったという。

参考:中小規模事業者のための脱炭素経営ハンドブック|環境省

モノづくりにおける環境負荷を低減|株式会社村田製作所

株式会社村田製作所では、モノづくりにおける気候変動対策を実施している。たとえば、再生可能エネルギーの長期調達や省エネ対策、サプライチェーンにおけるカーボンニュートラルに向けた取り組みなどが挙げられる。

同社は気候変動対策の強化を重点課題として掲げ、温室効果ガスの排出量削減を事業運営に織り込みながら取り組んでいる。

参考:環境とムラタ|muRata

店舗やサプライチェーンで温室効果ガス排出量を削減|株式会社ファーストリテイリング

株式会社ファーストリテイリングでは「LifeWearを生み出す」というコンセプトに基づいて、事業活動とサステナビリティ活動を一体として推進し、気候変動へ取り組んでいる。

温室効果ガス排出量の削減に向けて、以下の取り組みを実施している。

● 店舗やオフィスにおける省エネ対策...レイアウト見直しによる照明器具の数を削減
● サプライチェーンにおける温室効果ガス排出量の削減...工場で再生可能エネルギーの導入など

参考:気候変動への対応|FAST RETAILING

まとめ

気候変動対策(≒脱炭素)の視点を織り込んだ企業経営である「脱炭素経営」の実践は、地球環境だけでなく、企業の持続可能性を実現するうえで不可欠である。まずは業界の情報を収集して自社のCO2排出量を算定することから始め、具体的な対策を策定していこう。

株式会社ミライト・ワンは、太陽光発電システムの導入や、再生可能エネルギーの売電につながるサービスの導入をサポートしている。また建物自体を省エネ化するスマートビルソリューションも提供している。詳細は以下のサイトを参考にしてほしい。

太陽光発電システムのエンジニアリング&サービス
グリーンエネルギー事業
ZEB・スマートビルソリューション

「未来図メディア」メールマガジン登録

5G×IoTの最新情報やイベント・セミナー情報を
いち早くお届けします。

ミライト・ワンのソリューションに関するご質問、ご相談など
ございましたらお気軽にお問い合わせください。

ページトップへ