道路陥没事故を契機に動き出した下水道DX
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道路陥没事故が浮き彫りにした課題
老朽化が進む社会インフラの中でも、特に深刻な課題とされているのが下水道の維持管理だ。実際に、2025年1月28日、埼玉県八潮市中央一丁目の県道で道路が突然陥没し、走行中のトラック1台が穴に転落、運転手が死亡する事故が発生した。この事故は、地下に埋設されていた大口径の下水道管(直径約4.75m)が破損したことが主原因とみられている。
この事故を受け埼玉県は3月10日、「埼玉県下水道管路マネジメントシステムの共同研究」を開始すると発表した。
6者連携による共同研究の概要
埼玉県が設置した原因究明委員会は、下水道管の破損を招いた要因として、「従来手法による点検・調査の難しさ」があるとし、「点検・調査の品質確保」、「下水道管路の維持管理を担う関係者間の情報共有や体制強化」が必要だとしている。「埼玉県下水道管路マネジメントシステムの共同研究」は、この指摘を受けて実施するものだ。
共同研究には、NTT東日本を中心に、NTT e-Drone Technology、NTTインフラネット、国際航業、染めQテクノロジィ、日特建設の6者が取り組む。研究期間は、2026年3月10日から約2年間で、約1年で研究成果をまとめ、その後の1年間で研究成果のブラッシュアップを図るという。
本研究では、下水道DX(ドローン、AI、GIS等)や新素材・新工法による短時間補修技術を活用した新たな維持管理手法の検証を実施する。従来手法では、点検・調査、補修が困難であった箇所に対して、最新技術を活用することで、安心・安全・効率化を実現し維持管理手法の抜本的な改善を図り、将来的には県内流域全体を対象とした新しい維持管理モデルの構築を目指している。

6者連携による共同研究の概要(出典:埼玉県)
ドローンとAIによる点検の高度化
下水道の調査・点検には、ドローンの活用を考えている。理由としては、下水道の流れが速く、人体に有毒な硫化水素も発生していることから、人が立ち入ることが困難なためだ。これまでも、現場を担う点検・調査事業者からは、「下水道管路内部に立ち入ることなく、より安全に点検・調査を実施したい」という要望が寄せられていたという。また、下水道内は狭く暗い空間のため作業負担が大きいことや、水量・構造制約からロボットの活用が難しい点もドローンを利用する理由として挙げられている。
ドローンは、NTT e-Drone TechnologyのELIOS 3を使う予定で、映像の解析にはAI解析ツール「eドローンAI」を活用する。同社は、昨年、すでに神奈川県の公共下水道で飛行検証を実施しており、非GNSS(Global Navigation Satellite System:全地球航法衛星システム)環境での安定飛行、下水道特有の屈曲部での航行性能、狭くて暗い中での操縦性を確認している。
実際の検証では、ひび割れや腐食、付着物といった劣化の兆候を視認できるレベルの映像が取得され、従来のテレビカメラ調査に匹敵、あるいはそれを補完する手段としての有効性が示されたという。

ELIOS 3による水道管状況の把握(出典:NTT e-Drone Technology)
LiDARによる3次元可視化の可能性
さらに、LiDARを活用した3次元データの取得も進められている。レーザー光の反射を利用して周囲の形状や距離を計測するこの技術により、管路全体の形状や変状を立体的に把握することが可能となる。
これにより、従来は点や断面でしか把握できなかった情報を、空間的に把握できるようになることが期待されている。
補修技術の高度化と無人化への取り組み
補修技術の開発においては、染めQテクノロジィの材料や工法、日特建設の吹付技術などを活用し、短時間施工の高度化や省人化・無人化を見据えた手法が検討されている。
例えば、1,000mの長距離圧送を実現した高強度モルタルの吹付技術「キロ・フケール工法」など、既存技術の応用による効率的な補修が想定されている。また、橋梁やトンネルなどで実績のある塗料技術を活用し、下水管の再生延命にも取り組む。

「キロ・フケール工法」(出典:日特建設)
データ活用による維持管理の高度化
本研究では、点検データの管理・活用にも重点が置かれている。ドローンで撮影した動画を自動的に分割し静止画化する技術の確立や、それらのデータを地図システムへ自動登録する仕組みの開発が進められている。
さらに、管路の3次元モデルに保守履歴などの属性情報を重ね合わせることで、異常箇所や道路陥没リスクを直感的に把握できるインターフェースの構築も目指している。

共同研究におけるデータ管理技術の概要(出典:国際航業)
全国展開を見据えた取り組み
埼玉県には約440kmにおよぶ下水道管路が存在するが、そのうち半分程度は今回の研究で検証される手法で対応することが見込まれている。現段階では人が立ち入れる管路を対象としているものの、将来的には適用範囲の拡大も期待される。
埼玉県は、本研究が成功すれば、他自治体への展開も可能になると見ている。成功事例として全国に波及することで、日本全体のインフラ維持管理の高度化につながることが期待されている。老朽化インフラの課題が全国的に深刻化する中、本取り組みの動向は、今後のモデルケースとして注目されている。
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