災害時のドローン活用方法4つを紹介!メリットや課題、活用事例も
目次
- ▼1. 災害時に活用するドローンの特徴・機能
- ・災害現場における活用累計件数
- ▼2. ドローンを災害時に利用する際の特例
- ▼3. 災害時におけるドローンの活用方法4つ
- ・被害状況の調査
- ・被災マップの作成
- ・被災者の発見
- ・物資輸送
- ▼4. 災害時にドローンを活用するメリット
- ・迅速な初動対応が実現する
- ・離着陸に広いスペースが必要ない
- ・救援者のリスクを減らせる
- ・導入・維持コストを抑えられる
- ▼5. 災害時にドローンを活用するデメリットや課題はある?
- ・長時間飛行が難しい
- ・輸送できる物資の重量に制限がある
- ・通信状況に影響される
- ・天候に左右される
- ・パイロットの育成が必要
- ▼6. 災害時におけるドローンの活用事例
- ・ドローン活用事例①静岡県熱海市土砂災害
- ・ドローン活用事例②能登半島地震
- ▼7. まとめ
ドローン(無人航空機)は商業利用だけでなく、災害時にも被災状況の調査や物資輸送などで幅広く活用されはじめている。人やヘリコプターのような有人航空機では立ち入りが難しく、危険な場所でも小型のドローンなら立ち入ることが可能となる。
この記事では、災害時に活用するドローンの特徴や活用方法、メリットと課題、事例を詳しく紹介する。
災害時に活用するドローンの特徴・機能

災害時にドローンを活用する場合、上空から被災地を撮影して被害状況や遭難者の有無、安全なルートをリアルタイムで確認しなければならない。そのためには、高画質カメラやズーム機能付きカメラ、赤外線カメラなど、災害支援に特化した機能を利用できるドローンが必要となる。
またGPS機能の利用が重要で、あらかじめ飛行範囲やルートを設定しておけば自律飛行が可能になる。飛行経路をドローンに一度記憶させると、送信機と通信が途絶えたとしても飛行は継続できる。
災害現場における活用累計件数
現在、建物や山林の火災発生時や、山間部や沿岸部における遭難事故の救助者捜索などで、実際にドローンが活用されている。
消防庁の資料によると、2021年6月時点における災害現場でドローンを活用した累計件数は、合計で4,000件以上になる。とくに人の立ち入りが難しい火災原因調査において、ドローンが活用されている。
項目 | 件数 |
火災(建物・山林等) | 702件 |
火災原因調査 | 1,896件 |
自然災害(風水害、地震) | 200件 |
救助・捜索(山岳・水難事故) | 861件 |
その他 | 392件 |
合計 | 4,051件 |
ドローンを災害時に利用する際の特例

通常、災害時には捜索や救難活動のためにヘリコプターが飛行する可能性があるため、その妨げにならないようドローンの飛行は控えなければならない。しかし、国や地方公共団体から依頼を受けていれば特例が適用され、許可・承認を受けることなくドローンを飛行させられる。
許可・承認は不要とはいえ、飛行時における安全確保の責務は維持しなければならない。たとえば大規模災害が発生した場合、災害対策本部とドローン飛行の方法を調整する必要がある。
国から依頼を受けた例として、株式会社ミラテクドローンの事例を見てみよう。
2021年12月、ミラテクドローンは国土交通省と「無人航空機による災害応急対策活動(撮影等)に関する協定」を締結。2021年12月24日から2024年3月31日まで災害応急対策活動を実施し、東京都心23区内において震度6弱以上の地震が発生した際、ドローンを活用して被害状況の把握を行うと取り決められた。
災害時におけるドローンの活用方法4つ

続いて、災害時におけるドローンの活用方法を見てみよう。
● 被害状況の調査
● 被災マップの作成
● 被災者の発見
● 物資輸送
被害状況の調査
ドローンの活用で、災害による被害状況を調査できる。
災害時、建物の倒壊や火災発生などで被災地へ人が立ち入りにくくなっている。とくに山間部などの地域によっては、ヘリコプターでは機体が大きく、調査しにくい。
そこで小型のドローンを活用すれば狭い場所でも入りやすく、詳細を調査したい場合に向いている。たとえば東京都江東区では、株式会社ミラテクドローンと株式会社ミライト・ワンとともに、橋梁や道路の被災状況をドローンを使って調査する訓練を実施。

旧中川河川敷から飛び立ったドローンによる訓練中の撮影画像
(出典:ミラテクドローンのプレスリリースより引用)
訓練中に撮影された映像はリアルタイムで江東区役所へ中継され、上空からでも鮮明に状況を把握できることを確認した。江東区のドローンを活用した取り組みは以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてほしい。
関連リンク
防災に向けた橋梁点検や災害時の被災状況調査でのドローン活用を検討する江東区
被災マップの作成
ドローンが空撮した画像や映像を災害対策本部へリアルタイムで共有することで、被災マップを迅速に作成できる。
被災マップとは、自然災害による被害軽減のために避難経路や避難場所が表示されたもので、災害時には素早い作成が求められる。
たとえば、地上データを高精度で収集する3次元測量をドローンで行えば、被災状況を詳細に把握できる。詳細な被災マップが素早く完成すれば、予期せぬ事態でも復旧計画が立てやすくなるだろう。
被災者の発見
ドローンは飛行高度が低く、空撮によって被災者の早期発見と救助にも役立つ。
赤外線カメラを活用すれば、夕暮れや夜間であっても状況を確認でき、被災者を発見しやすくなる。山岳地で遭難者を捜索する場合、小型のドローンなら木があっても操作しやすい。
物資輸送
災害時に孤立した被災者に、医療物資や生活物資をドローンを使って輸送できる。
自然災害によって道路が寸断されてしまい、人がすぐに行けずヘリコプターも入りにくい状況でも、ドローンで必要な物資を届けられる。
災害時にドローンを活用するメリット

災害時に有人航空機であるヘリコプターを利用する場合と比較して、ドローン活用には多くのメリットがある。ここでは次の4つのメリットを見てみよう。
● 迅速な初動対応が実現する
● 離着陸に広いスペースが必要ない
● 救援者のリスクを減らせる
● 導入・維持コストを抑えられる
迅速な初動対応が実現する
ドローンは迅速な初動対応が可能となり、ヘリコプターに比べて出動時間を短縮できる。
人が入れない危険エリアでも状況確認ができるので、混乱が起きやすい災害時でも、素早く必要な情報を収集でき、復旧計画を立てやすくなる。
離着陸に広いスペースが必要ない
ドローンは限られたスペースでも離着陸が容易にでき、周囲の環境に左右されない点もメリットの一つ。
対するヘリコプターは広い空間や専用のヘリポートを必要とするが、ドローンは法律で規制されている飛行禁止区域はあるものの、離着陸に必ずしも広いスペースが必要ではない。
救援者のリスクを減らせる
ドローンは人の代わりに危険な場所に入って調査や物資輸送などができるため、救援者の二次災害やリスク低減につながる。
災害発生時、救援途中に人の不注意やさらなる自然災害が発生する恐れがあるが、自律飛行するドローンなら人が立ち入りにくい場所でも安全に飛行できる。
またドローンで空撮することで被災エリアを俯瞰的に把握でき、安全な救援・避難ルートを確保できる。
導入・維持コストを抑えられる
ヘリコプターに比べて、ドローンの導入や維持コストを抑えられる点もメリットとして挙げられる。災害時にヘリコプターなどの航空機は必要だが、コストがかかり自治体など災害支援を実施する団体にとって負担が大きい。
その点、ドローンの機体は比較的安価で、メンテナンスの負担も小さい。また資格取得など、人材育成にかかるコストもドローンであれば比較的抑えられる。したがって、ドローンの方がヘリコプターよりも導入ハードルは低いといえるだろう。
災害時にドローンを活用するデメリットや課題はある?

ドローンの活用には多くのメリットがあるが、いくつかの課題も残る。ここでは5つの課題を見てみよう。
● 長時間飛行が難しい
● 輸送できる物資の重量に制限がある
● 通信状況に影響される
● 天候に左右される
● パイロットの育成が必要
長時間飛行が難しい
ドローンは小型のため搭載するバッテリーが小さく、長時間飛行が難しい。しかし広域災害時には、ドローンを活用して迅速に全体像を把握しなければならない。飛行途中でバッテリーが切れてしまっては、必要な情報を収集できなくなるだろう。
そこで現在、水素燃料電池を使ったドローンが注目されている。
株式会社ミライト・ワンが近畿電機株式会社と共同開発した「水素燃料電池ドローン」は、従来のバッテリー駆動タイプのドローンと比較して長時間飛行を実現。2023年3月に実証実験に成功し、本格的な活用が期待されている。
水素燃料電池に関する詳細は、以下のサイトを参考にしてほしい。
輸送できる物資の重量に制限がある
小型のドローンは一度に運べる物資の重量が小さく、大型の物資は運搬できない点が課題として挙げられる。災害で交通が遮断され孤立した場所に救援物資を届けるには、何度も往復が必要になってしまう。
実際、半日をかけてドローンが40往復して断水が続く被災地に物資を届けた事例もある。
一般的なドローンの積載量は5〜10kgほどだが、最近では50kgや200kgの荷物まで運べるドローンも開発されており、実用化が期待されている。
通信状況に影響される
災害時におけるドローンの活用は、通信状況に影響される。
現在、ドローンはWi-Fiと同じ周波数帯である2.4GHzが主に利用されている。しかし離島や地方では通信環境が不十分な地域もあり、基地局から離れると通信環境が悪くなるケースが見られる。また周辺地域の通信利用状況によって、通信品質が低下することもある。
そこで現在、ドローンと5Gの組み合わせが期待されている。
2022年にNECはドコモと共同で5Gとドローンを活用した、自然災害における消防救助活動の実証実験を実施。ドローンが撮影した特定エリアの映像を、ドコモの5Gを通じてNECの映像解析技術で解析し、人物検知を行う仕組みが構築された。
また楽天グループと楽天損害保険は、5Gとドローンを活用して災害後の損害調査を行い、リアルタイムで鑑定する実証実験を実施している。
これらの実証実験については以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてほしい。
関連リンク
5Gとの組み合わせで災害対応から損害調査まで力を発揮するドローン
天候に左右される
空を飛行するドローンは天候に左右され、大雨や風が強い日は飛行できない。そこで、悪天候でも安定稼働できるドローンが求められている。
たとえば、株式会社ミラテクドローンが販売する「小型空撮ドローンSOTEN(蒼天)」は、風に強く、防塵・防水性にも優れているため、災害時の活用が期待されている。
実際、SOTENは厳しい環境下でも安全に利用できるとして、2024年1月に発生した能登半島地震でも利用された。

SOTEN(蒼天)について、詳細は以下のサイトを見てみてほしい。
ドローン販売(ACSL 小型空撮ドローンSOTEN(蒼天))
パイロットの育成が必要
現在、確かな操縦スキルを持つドローンのパイロットの育成が必要となっている。
災害時は通常時と比べて困難な状況を飛行することになり、ドローンを安全に飛行させるには十分な専門知識や操縦経験が求められる。
そこでドローンの基礎知識や法規制、安全な飛行のための操縦スキルを身につけるために、ドローンスクールで講座を受講して国家資格の取得を検討しよう。現場で必要となるスキルやノウハウを習得できる優良なスクールで国家資格を取得すれば、災害時の救助活動にも役立つだろう。
株式会社ミラテクドローンが運営するスクールでは、国家資格取得コースを提供している。ミラテクドローンスクールの特長は、次のとおり。
● 通信インフラ事業で培った現場力がある
● 1,200名以上のパイロット輩出の実績がある
● 国土交通省認定のドローンスクールを運営
● 都市部のスクールでは屋外ドローンフィールドを完備
ドローンの国家資格を取得しておくメリットとして、1等ライセンスを取得して一定の条件を満たすことで、立ち入り管理措置を実施せずに第三者上空の飛行が可能となり、有人地帯で目視外での自律飛行が可能になる。また国家資格の取得はスキルの証明になり、信頼が得やすく災害時の救済活動に貢献するだろう。
ミラテクドローンスクールの詳細は、以下のサイトを参考にしてほしい。
ドローンの国家資格については以下の記事で詳しく解説している。資格取得のための費用相場も把握できるので、ぜひ見てみてほしい。
災害時におけるドローンの活用事例
災害時に、実際にドローンを活用した事例を見てみよう。
● ドローン活用事例①静岡県熱海市土砂災害
● ドローン活用事例②能登半島地震
ドローン活用事例①静岡県熱海市土砂災害
2021年7月、静岡県熱海市伊豆山地区で発生した土砂災害において、ドローンが活用された。
ドローンで被災現場を撮影し、高低差などによるデータの歪みを整えて被災前の様子と重ね合わせた「状況図」を作成。土石流や流出した家の様子を画像化して3D加工処理しているため、被災現場の状況を正しく確認できる。
災害の全体像を状況図に反映させることで、情報共有の促進や二次災害防止に役立てている。
参考:ドローンで発災直後に被災前後の状況図作成!熱海土石流で実績|防災ニッポン
ドローン活用事例②能登半島地震
2024年1月に発生した能登半島地震においてもドローンが活用された。
石川県輪島市の要請により、ドローン関連会社5社が輪島市内でドローンによる捜索や被災状況確認、物資輸送を実施。倒壊した家の中に超狭小空間点検用のドローンが入って安全確認や現地調査が行われた。また物流専用ドローンによって、以下の救援物資が輸送されている。
● 持病を持つ避難住民の処方薬
● カイロ、紙おむつ、歯ブラシなどの生活必需品
● 菓子パン
さらに地すべりの兆候がある地域調査にもドローンが用いられ、ドローンが空撮した画像によって地割れの全体像を確認できたという。
まとめ
ドローンは商用利用だけでなく、災害時の救援活動や被害状況の把握にも活用されはじめている。小型のドローンは人やヘリコプターが入れない危険地帯でも利用できるため、安全を確保しながら迅速な復旧活動を進められるだろう。
株式会社ミラテクドローンのスクールでは、ドローンの国家資格を取得できるコースを提供している。災害時のドローン操縦には高度なスキルが必要とされるため、資格を取得して確かな技術を身につけよう。
また小型空撮ドローンの販売や、長時間飛行に欠かせない水素燃料電池も提供しているので、以下のサイトを参考にしてみてほしい。
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