工場の省エネ対策アイデア4つや改善事例、補助金を紹介

2024年7月8日

工場における省エネ対策として、再生可能エネルギーの導入や電力消費量の可視化、節電対策などさまざまな方法があげられる。

この記事では、工場で省エネ対策が求められている理由や、省エネにつながる4つのアイデア、改善事例をわかりやすく解説する。

今後、自社工場で省エネの取り組みを強化したいと考えている企業担当者の方へ、省エネ対策に利用できる補助金も紹介しているので、参考にしてほしい。

工場で省エネ対策が求められている理由

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工場で省エネ対策が求められている理由として、主に次の4つがあげられる。

 ● 高騰する燃料価格
 ● コスト削減
 ● 法的規制の厳格化
 ● SDGsの達成に貢献

一つずつ、詳しく見ていこう。

高騰する燃料価格

ウクライナ情勢を受け、燃料価格が高騰し企業の電気料金などにも影響を与えている。

工場へ太陽光発電設備を導入するなど、省エネ対策を実施して自家発電の割合を増やしていくと、エネルギー供給の安定化や価格変動による影響の緩和が実現するだろう。

コスト削減

上記のように高騰する燃料価格や電気料金は工場を運営する企業にとって負担となるが、省エネ対策を進めることでコスト削減につながる。

機器の買い替えなどは導入コストがかかるため、短期的に経営を圧迫する可能性があるかもしれない。しかし長期的に見るとエネルギー消費量を抑えられ、ランニングコストを削減できるだろう。

法的規制の厳格化

現在、カーボンニュートラルを実現するために法的規制が厳格化されている。たとえば省エネ法(※)では、工場・事業場と運輸分野に対して、 エネルギー管理者の選任や中長期計画の提出、エネルギー使用状況の定期報告などの義務が課されている。

(※)正式名称:エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律
分野 報告義務の対象者
工場・事業場 エネルギー使用量1,500kl/年以上の特定事業者等
運輸(特定貨物/旅客輸送事業者) 保有車両トラック200台以上等
運輸(特定荷主) 年間輸送量3,000万トンキロ以上

定期報告を怠り、または虚偽の報告をした場合、立入検査を拒否した場合などは、50万円以下の罰金が科される恐れがあるので、対象企業は確認が必須となっている。

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カーボンニュートラルの実現を目指す企業の取り組みや具体例を紹介

SDGsの達成に貢献

工場での省エネに向けた取り組みは、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献する。

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)とは、2030年までに持続可能な世界を目指すための国際目標のこと。17の目標・169のターゲットから構成される。

17の目標のうち、「7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに」という目標がある。たとえば、太陽光発電設備を工場の屋上に設置することでクリーンなエネルギーを利用でき、目標7の達成に役立つだろう。

工場の省エネ対策アイデア4つ

工場の省エネ対策アイデア4つ イメージ

工場の省エネ対策として、今回は次の4つのアイデアを紹介する。

 ● 再生可能エネルギーの導入
 ● 照明や空調機器を省エネタイプへ入れ替える
 ● ボイラーの排熱の再利用
 ● 電力消費量の可視化

再生可能エネルギーの導入

再生可能エネルギーの導入は工場の省エネ対策になる。再生可能エネルギーの利用割合を高めると、化石燃料の消費量を削減でき、輸入に依存している化石燃料からの脱却につながる。

また化石燃料は有限だが、再生可能エネルギーは自然界のどこにでも存在し枯渇することがないので、長期的に安定したエネルギー供給が可能になるだろう。

株式会社ミライト・ワンでは、太陽光発電システムの導入支援サービスを提供している。工場の屋上に太陽光発電システムを設置することで、再生可能エネルギーの自社発電が実現し、利用が促進される。詳細は以下のサイトを参考にしてほしい。

太陽光発電システムのエンジニアリング&サービス

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再生可能エネルギーとは?種類やメリット・デメリット、導入方法を紹介

照明や空調機器を省エネタイプへ入れ替える

工場の古い照明をLEDへ交換したり、空調機器を最新の省エネタイプに入れ替えたりすることで、効率的なエネルギー活用ができる。切れかけている照明や、故障して蒸気などが漏れている機器がないかをチェックしてみよう。

また、不要な照明や機器の電源を切る、エアコンの設定温度を決めるなど、簡単で小さな行動の積み重ねも重要となる。

まずは一般社団法人 省エネルギーセンターが実施する「省エネ最適化診断」を受けてみて、診断結果から工場の現状を把握して、入れ替えが必要な機器や省エネ対策のアドバイスを受けるのも一つの方法だろう。

参考:一般社団法人 省エネルギーセンター|省エネ最適化診断

ボイラーの排熱の再利用

ボイラーの省エネ対策として設定温度や運転台数の見直し、漏れの確認をするだけでなく、排熱を「コージェネレーションシステム」で再利用する方法もある。

コージェネレーションシステムとは、ボイラーや発電装置などの稼働時に排出される熱を回収し、給湯や暖房などに再利用するシステムのこと。従来は捨てられていた熱を再利用することで、エネルギー効率を高められるだけでなく、コスト削減にもつながる。

電力消費量の可視化

工場内の電力消費量をリアルタイムで可視化するシステムを導入しよう。可視化されたデータを分析することで、電力のムダが発生している場所や時間帯を特定でき、電力消費量の削減に向けた取り組みが可能となる。

株式会社ミライト・ワンは、省エネだけでなく創エネまで対応したスマートビルを実現するためのソリューションを提供している。ぜひ以下のサイトを参考にしてみてほしい。

ZEB・スマートビルソリューション

工場における省エネ対策の取り組み事例

続いて、工場で実際に行われた省エネ対策の取り組み事例5選を紹介する。

 ● 空調温度設定から太陽光発電設備まで幅広い省エネ対策を実施|光洋精機株式会社
 ● 空調機器のフィルタ清掃やLEDへの置き換えを実施|コーセル株式会社
 ● 省エネ設備への機器更新とデータを活用した生産方法の確立|株式会社資生堂
 ● 工場CO2ゼロチャレンジ|トヨタ自動車株式会社
 ● i-BELTで生産にかかる消費エネルギーを可視化|オムロン株式会社

空調温度設定から太陽光発電設備まで幅広い省エネ対策を実施|光洋精機株式会社

光洋精機株式会社の山形工場では、省エネ診断を受けて以下の省エネ対策を実施した。

 ● 空調設定温度の緩和
 ● 空気配管の漏れ防止対策
 ● 空調室内機のフィルタ清掃
 ● 太陽光発電設備の導入 など

コストのかからない取り組みから高効率化に向けた設備投資までを行った結果、年間でエネルギー使用量が34kL、CO2排出量が60トン、約280万円もの削減が見込まれている。

参考:一般財団法人省エネルギーセンター|経営改善につながる省エネ事例集2023年度

空調機器のフィルタ清掃やLEDへの置き換えを実施|コーセル株式会社

コーセル株式会社の立山工場では、以下のような幅広い取り組みを実施。

 ● コンプレッサ吐出圧力の低減
 ● 空調負荷の自動制御化
 ● 2,000台もの蛍光灯をLEDへ置き換え
 ● ファンの風量調整や清掃 など

省エネ診断による提案では、年間でエネルギー使用量が35kL、CO2排出量が87トン、約350万円もの削減につながると期待されている。

参考:一般財団法人省エネルギーセンター|経営改善につながる省エネ事例集2023年度

省エネ設備への機器更新とデータを活用した生産方法の確立|株式会社資生堂

株式会社資生堂の掛川工場では、カーボンニュートラルの実現に向けて以下の省エネ改革に取り組んでいる。

 ● 電力データ収集システムの構築
 ● 省エネ改善活動へのモチベーションアップ対策
 ● 省エネ設備への機器更新
 ● 再生可能エネルギーの導入
 ● 製品1個あたりの生産プロセス別のエネルギーの可視化 など

取り組みの結果、年間でCO2排出量が1,585トン、735kLものエネルギー使用量削減につながったという。

参考:一般財団法人省エネルギーセンター|経営改善につながる省エネ事例集2023年度

工場CO2ゼロチャレンジ|トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車株式会社では、車の製造時に工場から排出するCO2をゼロにする「工場CO2ゼロチャレンジ」に取り組んでいる。具体的には、革新技術と日常改善、再生エネルギーと水素の活用によって、以下の目標を掲げている。

 ● 2030年に工場CO2排出を35%削減(2013年比)
 ● 2050年に工場CO2排出ゼロを実現

たとえば、季節ごとに昇温時間を変更するなどの省エネ対策や、地中熱の利用、クリーン水素の製造などに取り組んでいる。

参考:トヨタ自動車株式会社工場|CO2ゼロチャレンジ

i-BELTで生産にかかる消費エネルギーを可視化|オムロン株式会社

オムロン株式会社の自社工場では、「i-BELT」と呼ばれる現場データ管理サービスを活用し、工場のすべてを可視化している。

同社の工場では、空気中の微細なゴミを減らすために、コスト度外視で電力を消費してきた背景がある。しかしi-BELTなどを用いて工場の空気や稼働状況を可視化することで、空調機器をオフにしても品質に影響を及ぼさない時間帯を発見。

綾部事業所の工場でモニタリングと改善を続けたところ、生産量が35%増加しているにもかかわらず、消費エネルギーは15%の削減につながったという。

参考:オムロン株式会社|企業のカーボンニュートラルを推進

工場の省エネ対策に利用できる補助金

「工場の省エネ対策に取り組みたいが、社内で予算を確保できない」と悩んでいる場合、補助金の活用を検討してみよう。

企業や工場の省エネ活動を支援する補助金を利用することで、省エネ対策を推進できる。

省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金

省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金は、先進的な省エネ設備や、工場・事業場に合わせた特注品など、更新費用の一部を支援する補助金である。

工場・事業場型、電化・脱炭素燃転型、エネルギー需要最適化型などの種類があり、工場・事業場型補助金の概要と要件は次のとおり(※)。

省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金の工場・事業場型
概要 先進設備や工場・事業場全体で、機器設計が伴う設備や事業者の使用目的・用途に合わせて、設計・製造する設備等の導入を支援。
a.先進設備・システムの導入と、b.オーダーメイド型設備の導入の2種類がある。
要件 a.先進設備・システムの導入 申請単位において、原油換算量ベースで、以下いずれかの要件を満たす事業
①省エネ率+非化石割合増加率:30%以上
②省エネ量+非化石使用量:1,000kl以上
③エネルギー消費原単位改善率:15%以上

補助率:2/3以内(中小企業者等)、1/2以内(大企業、その他)
補助金限度額:100万円〜15億円/年度
b.オーダーメイド型設備の導入 申請単位において、原油換算量ベースで、以下いずれかの要件を満たす事業
①省エネ率+非化石割合増加率:10%以上
②省エネ量+非化石使用量:700kl以上
③エネルギー消費原単位改善率:7%以上

補助率:1/2以内(中小企業者等)、1/3以内(大企業、その他)
補助金限度額:100万円〜15億円/年度
公募期間 2024年5月27日(月)~7月1日(月)

参考:一般社団法人環境共創イニシアチブ|省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金

(※)2024年6月時点の情報を記載

中小規模事業所のゼロエミッションビル化支援事業|東京都

東京都は、2050年ゼロエミッション東京を実現するために、中小規模事業所のゼロエミッションビル化に向けた取り組みに必要な経費の一部を助成している。

助成対象者や要件、助成額などは次のとおり。

中小規模事業所のゼロエミッションビル化支援事業
助成対象者 中小企業等(中小企業、学校法人、公益財団法人、医療法人、社会福祉法人等)
概要 1.ゼロエミビル化設計支援
2.ゼロエミビル化設備導入支援
以上にかかる設計費、設備費、工事費
要件 1.ゼロエミビル化設計支援 ゼロエミビル化設計により、BELS認証五つ星(キラ星も含む)を取得すること。
2.ゼロエミビル化設備導入支援 ゼロエミビル化設備の導入によって、ZEB Oriented相当の省エネ性能を達成すること。
地球温暖化対策報告書を提出すること。
助成額 1.ゼロエミビル化設計支援 助成率:助成対象経費の2/3
助成上限額:1,000万円
2.ゼロエミビル化設備導入支援 助成率:助成対象経費の2/3
助成上限額:1億5,000万円
公募期間 助成金の申請は令和6年度まで

参考:クール・ネット東京|中小規模事業所のゼロエミッションビル化支援事業

既存建築物省エネ化推進事業

既存建築物省エネ化推進事業は、建築物の省エネルギー改修等の促進を目的に、事業の実施に要する費用の一部を国が支援するもの。

対象事業や要件、補助率などは次のとおり。

既存建築物省エネ化推進事業
対象事業 既存のオフィスビル等の建築物の改修
※工場・実験施設・倉庫等の生産用設備を有する建築物の改修、後付の家電等の交換等は対象外
主な事業要件 ・躯体(外皮)の省エネ改修
・建物全体におけるエネルギー消費量が、改修前と⽐較して20%以上の省エネ効果が⾒込まれる改修⼯事
・改修後に一定の省エネルギー性能に関する基準を満たす
・改修後の建築物の省エネルギー性能を表示する
・省エネルギー改修工事とバリアフリー改修工事に係る事業費の合計が500万円以上 など
補助率・補助限度額 補助率:1/3
補助限度額:5,000万円/件
公募期間 令和6年4月24日(水)~ 令和6年5月29日(水)

参考:既存建築物省エネ化推進事業

需要家主導型太陽光発電導入支援事業

需要家主導型太陽光発電導入支援事業は、需要家、小売電気事業者、発電事業者が連携し、発電事業者が実施する太陽光発電設備等の導入の経費の一部を補助するもの。再生可能エネルギーの導入拡大や、安定的なエネルギー需給構造の構築を目的としている。

補助対象事業者と主な要件などは、以下のとおり。

需要家主導型太陽光発電導入支援事業
対象事業者 特定の需要家に電気を供給するために新たに太陽光発電設備を設置する者
主な要件 ・対象設備が、電気事業者による再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法の認定計画に含まれない
・合計2MW以上の新設設備で、補助対象経費のうち蓄電池を除く単価が23.9万円/kW(ACベース)未満
・原則として①単年度事業については令和7(2025)年2月28日までに、②複数年度事業については最長令和9(2027)年2月26日までに運転開始する
・8年以上にわたり一定量以上の電気の利用契約等を締結する
・再エネ特措法に基づく「事業計画策定ガイドライン」および「説明会及び事前周知措置実施ガイドライン」を遵守する
補助率 自治体連携型:2/3以内
自治体連携型以外:1/2以内
公募期間 複数年度事業:令和6年4月26日(金)12:00 ~ 令和6年6月14日(金)17:00

参考:需要家主導型太陽光発電導入支援事業

まとめ

工場の省エネ対策は、再生可能エネルギーの導入や機器の入れ替え、電力消費量の可視化など、複数のアプローチを組み合わせて実施することが重要となる。設備更新に必要な工事費などは、補助金が利用できる場合もあるのでチェックしてみよう。

株式会社ミライト・ワンは、太陽光発電システムの導入や、グリーン電力の売電事業の構築、建物全体を省エネ化するソリューションを提供している。詳細は以下のサイトで紹介しているので、参考にしてほしい。

太陽光発電システムのエンジニアリング&サービス
グリーンエネルギー事業(PPA)
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