ホテルで人手不足が深刻化する原因とは?5つの対策を紹介
ホテル業界では、人手不足が深刻化している。コロナ禍を経てインバウンド需要が増加し、ホテルの客室稼働率は以前の水準まで回復しているが、フロントや清掃、調理部門などの人手不足が原因で予約を断るホテルも見られている。
本記事では、ホテル業界における人手不足の現状、原因と課題、人手不足解消に向けた対策を紹介する。
ホテル業界における人手不足の現状
ホテル業界は、コロナ禍を経て観光需要が回復しているにもかかわらず、深刻な人手不足に陥っている。
2023年に東京商工会議所が報告した人手不足に関する調査によると、宿泊・飲食業の79.4%が「人手が不足している」と回答していることがわかった。そのうち、人手不足が「深刻」と回答した割合は8割以上となった。
一方、2024年に観光庁が公表した「宿泊旅行統計調査」によると、2023年の日本人・外国人の延べ宿泊者数は、約5億9,000万人泊で、コロナ前の水準まで戻っている。
ホテルの客室稼働率も回復しつつあるが、実際は人手不足によって、部屋は空いているのに稼働ができないことで、予約を止めざるを得ない状況も見られている。
ホテル業界で人手不足が起こるのはなぜ?原因・課題を徹底解説
ホテル業界で人手不足が起こる原因・課題として、主に次の4つがあげられる。
● コロナ禍で観光業の脆弱性が明らかになった
● 全産業と比較してホテル業界の離職率が高い
● 長時間労働が発生しやすい
● 有給休暇を取りにくい
ここからは、それぞれの原因・課題について詳しく見ていこう。
コロナ禍で観光業の脆弱性が明らかになった
人手不足が起こる原因として、コロナ禍で観光業の脆弱性が明らかになった点があげられる。
2020年から2022年頃にかけて、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために人の移動が規制されたことで、観光業は大きな打撃を受けた。客室稼働率が大幅に下がった上、従業員に雇用不安が生まれたことにより、2020年後半から2021年前半にかけて離職する人が増加した。
2023年には、コロナ前と同水準に観光需要は持ち直しているが、コロナ禍で観光業の脆弱性が明らかになり、離職者の中には観光業に復帰したがらない人も見られている。
全産業と比較してホテル業界の離職率が高い
全産業と比較して、ホテル業界の離職率が高い傾向にある点も、人手不足が起こる要因の一つと考えられる。
以下の表で、厚生労働省の「令和5年 雇用動向調査結果の概要」から、産業・就業形態別の入職率・離職率を見てみよう。
合計 | 一般労働者 | パートタイム労働者 | ||||
区分 | 入職率 | 離職率 | 入職率 | 離職率 | 入職率 | 離職率 |
産業計 | 16.4% | 15.4% | 12.1% | 12.1% | 27.8% | 23.8% |
宿泊業・飲食サービス業 | 32.6% | 26.6% | 19.8% | 18.2% | 40.5% | 31.9% |
宿泊業・飲食サービス業の離職率(合計)は26.6%で、全産業の15.4%と比較して高い。
ただし、入職率(32.6%)の方が離職率(26.6%)より高く、2023年にはコロナ禍の需要の落ち込みから回復し、積極的な採用活動によって労働者数の増加が起こったと考えられる。
長時間労働が発生しやすい
ホテル業は、長時間労働が発生しやすい傾向にある。そのため、労働環境の悪化によって疲弊し、離職する人が増えることも、人手不足の原因につながっていると考えられる。
特にリゾートホテルや旅館は、週末や連休、年末年始など繁忙期に客室稼働率が上がりやすく、休みが取りにくいケースもある。
ホテルによっては、夜勤スタッフを常駐させて24時間対応していることもある。常駐体制がない場合でも、夜中に宿泊客から電話がかかると、ホテルへ駆けつけなければならないケースも見られる。
また、朝食の準備のために早朝に出勤し、宿泊客がチェックアウトしてから次のチェックインまでは中抜け休憩をして、夕食の時間帯から再び勤務する...といったシフト制が採用されている場合、1日の拘束時間が長く感じてしまうだろう。その結果、生活が不規則になることで従業員の負担が大きくなり、離職を考えてしまうこともあるといえる。
有給休暇を取得しづらい
厚生労働省の「令和5年 就労条件総合調査 結果の概況」によると、宿泊業・飲食サービス業における労働者1人あたりの年次有給休暇の取得率は、49.1%であることがわかった。これは、すべての産業の中で最も低い数値で、全産業の平均取得率である62.1%を大きく下回る結果となった。
慢性的な人手不足に陥っているホテルでは、休日を消化することで精一杯で、有給休暇を取得できないケースも多い。
有給休暇が取りにくい職場環境では、リフレッシュができずストレスが溜まって離職する人が増え、人手不足につながることがうかがえる。
ホテル業界の人手不足解消に向けた対策
ここからは、ホテル業界の人手不足解消に向け、どのような対策が行われているか見ていこう。
● 労働環境を見直す
● ロボットの活用で清掃・配送・配膳業務の効率化を図る
● AI搭載のロボット導入が海外ゲストに対応する
● ホテル客室タブレットの導入でフロント業務の効率化を図る
● RPAの活用で予約管理業務を省力化する
それぞれ詳しく解説していくので、ぜひ参考にしてみてほしい。
労働環境を見直す
まずは労働環境を見直し、働きやすい職場づくりを行うことが大切となる。具体的には、以下の方法があげられる。
● 休館日を拡大する
● 中抜け休憩をなくして勤務体系を見直す
● 固定シフト制を導入して休日を確保しやすくする
● 適切な人事評価制度の導入と賃金の引き上げを行う
● 有給休暇を取得しやすい職場づくりに取り組む
● 長時間労働を是正する
前述のように、ホテル業界では休みが取りにくい状況となっている。そこで、全員が一斉に休みを取得できる休館日の日数を増やす方法がある。また、中抜け休憩を含めたシフト制をやめて、固定シフト制に移行すると休日を確保しやすくなるだろう。
適切な人事評価制度の導入や賃金の引き上げは、従業員のモチベーション向上につながると期待できる。その他、長時間労働を是正するには、労働時間を正確に把握するシステムの導入や、業務効率化につながるロボットやデジタル技術の活用も一つの方法としてあげられる。
魅力ある職場づくりに取り組むことで、従業員が定着するようになり、人手不足の解消につながると考えられる。
ロボットの活用で清掃・配送・配膳業務の効率化を図る
自律移動するロボットの活用によって、清掃・配送・配膳業務の効率化が実現する。
例えば、ホテル内のフロアを自動で移動し、共有スペースを清掃したり、ホテルのアメニティなどを運んだりするロボットの導入を検討してみよう。ロボットが人の代わりに働くことで、清掃スタッフやレストランスタッフの人手不足対策につながる。
株式会社ミライト・ワンは、エレベーターと連携して自律移動するロボットを提供し、ホテルや飲食店などの施設で、清掃や配膳業務の効率化を支援している。
実際、三井ガーデンホテル銀座築地に配送ロボットが導入され、客室に設置するアメニティや飲食物の配送を行い、従業員の業務軽減や宿泊者の利便性向上に寄与している。配送ロボットは後付けでエレベーターと連携でき、従来のように高額なコストや設置工事は必要ない。
下記のサイトで、自律移動ロボットの詳細や三井ガーデンホテル銀座築地の導入事例を紹介しているので、ぜひチェックしてみてほしい。
参考:エレベーターと連携する配送ロボットを「三井ガーデンホテル銀座築地」に導入~従業員の配送業務の軽減や宿泊者の利便性向上に貢献~
AI搭載のロボット導入が海外ゲストに対応する
AI搭載のロボットを導入し、海外ゲストに多言語で対応することで、ホテルの人手不足を補うことができる。ホテルのフロントでは、次のような問い合わせが宿泊中のゲストから寄せられることがある。
● レストランや大浴場、プール、事務など、ホテル内施設の利用可能時間
● チェックイン・チェックアウト時間
● Wi-Fiのパスワード
● アメニティやルームサービスの注文方法や提供時間
ホテルのフロントに設置されたAI搭載のロボットが、このようなホテル内施設・サービス案内を外国語でも対応することで、フロントスタッフの業務効率化につながる。さらに、ゲストが正しい情報をスムーズに取得できることで、顧客満足度の向上にもつながるだろう。
株式会社ミライト・ワンは、AIアシスタント機能が搭載された「AI コミュニケーションロボット"temi"」の導入支援を行っている。遠隔地からロボットを操作でき、ホテルなどの施設案内や宿泊客へのサービス案内を実施。さらに、搭載されたセンサーやカメラによって、障害物を回避しながらホテル内を巡回することもできるので、最適なルートを走行してゲストの元へ移動することができる。
下記のサイトで、AIコミュニケーションロボット"temi"の導入メリットや機能について解説しているので、ぜひチェックしてみてほしい。
ホテル客室タブレットの導入でフロント業務の効率化を図る
各客室に専用タブレットを導入することで、ホテル情報の提供を自動化し、フロント業務の効率化と人手不足の緩和を同時に実現しやすくなる。具体的には、宿泊ゲストは以下のような情報をタブレットから確認できる。
● Wi-Fiのパスワード
● 貸切風呂の混雑状況
● アメニティやルームサービスのオーダー
● 周辺の観光情報 など
専用タブレットの導入によって、ゲストは必要な情報をすぐに確認でき、フロントも業務負担を軽減できるというように、ゲストと従業員の双方にとってメリットがある。
従来では、ホテルから宿泊ゲストへ情報を発信する媒体として、客室に置いてある「インフォメーションブック」が主に使用されてきた。しかし、紙に印刷して作成するインフォメーションブックは、最新情報の反映に時間と労力がかかってしまう。さらに、作成してしばらく経つと変色するなど、劣化が目立つ可能性がある。
そこで、専用のタブレットを活用することによって、リアルタイムで最新情報を宿泊ゲストに発信できる上、各ページが劣化してしまう心配もなくなる。
例えば、株式会社ミライト・ワンが導入支援している「イータブ・プラス®」は、施設や観光案内、レストランの混雑確認だけでなく、アンケートの実施も可能である。アンケートの回答内容にクレームが含まれていた場合、滞在中のゲストへ迅速なフォロー対応もできるようになるため、満足度向上に貢献するだろう。
「イータブ・プラス®」の詳細は以下のサイトで紹介しているので、ぜひチェックしてみてほしい。
RPAの活用で予約管理業務を省力化する
RPA(Robotic Process Automation)を活用することで、ホテル予約の管理業務を省力化することができる。RPAとは、人間が行う定型業務プロセスを自動化する技術のこと。ホテルでは、予約の受付・確認・変更・キャンセルなど一連の作業を自動化することができる。
一般的に、ホテルでは複数の宿泊予約サイトやメール、電話などの方法で宿泊予約を受け付けている。宿泊予約サイトから提供される情報には、宿泊者名や宿泊日、人数などの基本情報が含まれ、ホテル側のシステムと連携することで自動的に反映される。しかし、それ以外の詳細情報は予約媒体ごとに異なるため、ホテル側のシステムとは連携できない。
具体的には、以下のようなリクエストが宿泊ゲストから寄せられることがある。
● 食物アレルギーの有無
● 車椅子での移動
● 誕生日ケーキの用意
● アーリーチェックイン対応
● エステ予約 など
ホテルのフロントスタッフは各宿泊予約サイトから届いた内容を目視確認し、必要な情報を抽出してホテル側のシステムに転記作業を行う必要がある。しかし、この方法は時間がかかり、件数が多いと転記ミスが起こる可能性もある。ミスや記載漏れがあると、ホテル内で伝達事項を正確に共有できず、クレームにもつながりやすくなってしまう。
そこで、RPAを活用して、基本情報以外の詳細情報もホテル側のシステムと自動連携するようカスタマイズすると、転記ミスや漏れが減り、省力化が実現することが期待できる。
株式会社ミライト・ワンは、予約管理業務のRPA化支援サービスを提供している。作業内容や指定ワードなどをあらかじめ設定しておくことで、複数の宿泊予約サイトに自動でログインし、受信内容を解析・抽出して、ホテル側のシステムへ自動で記入する仕組み。実際、導入後に「スタッフの稼働時間が約45%削減した」と評価をいただいたこともある。
サービスの詳細は、以下のサイトで紹介しているのでチェックしてみてほしい。
まとめ
ホテル業界で人手不足が深刻化する原因として、長時間労働や不規則なシフト勤務、休みが取りにくい環境などが考えられる。人手不足が続くと十分なゲスト対応ができず、予約を制限せざるを得ない状況に陥り、結果として収益が低下する恐れがある。
人手不足に対応するために、職場環境を改善して休みを取りやすくする他、ロボットやデジタル技術を導入して業務効率化・省人化を図る方法もある。必要に応じて取り組んでみよう。
株式会社ミライト・ワンでは、「MIRAIT ONE ホテルソリューション」を提供している。本記事で紹介した清掃・配送ロボット、客室専用タブレット、RPAの導入だけでなく、脱炭素化に向けたソリューションも提供している。ICT・通信設備環境の提案から必要なサービスの構築、保守までトータルでサポートしているため、ぜひ以下のサイトからチェックしてみてほしい。
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