ホテル業界のSDGsへの取り組み例7選【国内高級ホテルから海外ホテルまで】

2024年2月13日

世界的にSDGsの取り組みが加速する現代において、ホテル業界においても取り組みが求められている。国連世界観光機関(UNWTO)は、観光業界の全関係者に対してSDGsの取り組みへ参加するよう促している。

この記事では、SDGsの基礎知識やホテル業界における取り組み、メリット、具体例を紹介するので、参考にしてほしい。

SDGsの目標17項目とは

今さら聞けない!カーボンニュートラルの基礎知識 イメージ

出典:持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けて日本が果たす役割

ホテル業界とSDGsとの関連性を説明する前に、まずは「そもそもSDGsとは何か」そして「観光事業とSDGs」について解説する。

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)とは、2015年の国連サミットで採択された国際目標のこと。「誰一人取り残さない」ことを誓い、持続可能で多様性と包摂性のある社会を実現するために、2030年までが期限の17の目標を掲げている。

SDGsの目標1から17までの概要を見てみよう。

SDSsの目標 概要
目標1 地球上のあらゆる形の貧困に終止符を打つ
目標2 飢餓を終わらせ、食料の確保と栄養状態の改善を達成し、持続可能な農業を行う
目標3 誰もが健康的で幸せな生活を送れるように、福祉を推進する
目標4 すべての人々に公平で質の高い教育を提供し、生涯にわたり学習機会を提供する
目標5 ジェンダー平等を達成し、女性・女の子の可能性を広げる
目標6 すべての人々に水と衛生を確保し、持続的に管理できるようにする
目標7 安くて信頼でき、現代的なエネルギーを利用できるようにする
目標8 持続可能な経済成長を推進し、すべての人々が働きがいのある人間らしい仕事ができるようにする
目標9 強靭なインフラを整備し、持続可能な産業化を推進する
目標10 世界中の不平等を是正する
目標11 安全に暮らせて災害に強く、持続可能な街を作る
目標12 生産者と消費者が、地球環境と人々の健康を守れるよう、持続可能な行動を取る
目標13 気候変動による影響を軽減するために緊急的な対策を講じる
目標14 海洋とその資源を保全し、持続可能な形態で利用する
目標15 陸域生態系を保護し、砂漠化へ対処し土地の劣化を阻止する
目標16 すべての人々へ司法へのアクセスを提供し、平和で包摂的な社会を実現する
目標17 持続可能な開発目標を実現するために、グローバルパートナーシップを強化する

観光事業とSDGs

持続可能な責任ある観光の促進を責務とする「国連世界観光機関(UNWTO)」は、SDGsの達成に貢献するために取り組みを進めている。とくに観光が主要テーマになる目標8、12、14が重要視されている。

またUNWTOは「SDGsのための観光のプラットフォーム」を策定し、観光に関わるすべてのステークホルダーを対象に、SDGsの取り組みへの参加を促している。

同プラットフォームによると、観光におけるSDGsは次のように解釈されている。

SDSsの目標 観光におけるSDGsの概要
目標1 観光は世界最大の事業のひとつであり、持続可能な観光開発と貧困に関する目標達成に貢献する
目標2 ホテルや観光客へ地元の産物を販売でき、持続可能な農業につながる。またアグロツーリズムは体験価値を高める
目標3 観光で得た税収を医療サービスに再投資することで、保健や福祉の改善につながる
目標4 観光事業に従事する人々に教育を提供する
目標5 ホスピタリティ関連事業は、女性のエンパワーメントにつながる
目標6 観光事業において、水の効率的な利用、汚染防止対策を行う
目標7 観光業はエネルギーを大量に消費するため、再生可能エネルギーへの移行で気候変動の緩和に役立つ
目標8 世界の10人に1人の雇用を生み出している観光業は、若者と女性に労働の機会を提供する
目標9 観光の発展はインフラに依存しており、環境業はインフラ改修のための公共政策に影響を与える
目標10 地域住民も参加できる観光事業は、都市再生や農村開発に貢献し、不平等の是正に貢献する
目標11 観光事業の促進はインフラやアクセスを向上させ、文化遺産や自然遺産を保護する
目標12 観光産業は「持続可能な消費と生産」を実践しており、世界の持続可能性に向けた転換を加速するうえで重要になる
目標13 輸送・宿泊部門におけるCO2排出量を削減することで、気候変動に対応できる
目標14 沿岸・海洋観光は海洋生態系に依存しているため、海洋資源の持続可能な利用に寄与するブルーエコノミーへ関与する必要がある
目標15 生物多様性と自然遺産は、観光客が目的地を訪れる理由となるため、保全事業を促進する
目標16 多様な文化的・宗教的背景を持つ人々との出会いを促す観光業は、他者への寛容さと理解力を育む。また紛争後の社会平和を強固にする
目標17 特性上、観光は民間と公共のパートナーシップを強化し、さまざまな関係者を横断的に巻き込みながら、持続可能で責任のある開発ができる

参考:TOURISM FOR SDGs|UNWTO

日本では、2015年の国連サミット以降、インバインドの拡大やサステナビリティに向けた取り組みの必要性が高まってきた。

2018年、国土交通省が管轄の観光庁に「持続可能な観光推進本部」を設置。持続可能な観光を各地自体に根付かせ、マネジメントしていくために、2020年に国際基準(GSTC-D)に準拠した「日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)」を策定した。

ホテル業界におけるSDGsの取り組み

ホテル業界におけるSDGsの取り組み イメージ

観光において重要な役割を担うホテル業界でも、SDGsの達成に向けた取り組みが求められている。ここでは、観光において主要テーマとなる目標8、12、14に関して、ホテルがどのような取り組みができるかを紹介していく。

 ● 目標8:経済成長と雇用
 ● 目標12:持続可能な消費と生産
 ● 目標14:海洋と海洋資源の保全

【目標8】経済成長と雇用

観光は経済成長の原動力のひとつで、UNWTOによると世界で10人に1人が観光業界で働いている。

しかし国内に目を向けると、帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2023年10月)」では、インバウンドが好調な「旅館・ホテル」分野で、人手不足の割合は75.6%とトップになった。

そこで持続的な雇用を実現するために、ホテルでは働きがいのある職場作りや女性のキャリアをサポートする制度、海外人材を確保して育成する体制作りなどが必要だと考えられる。

参考:人手不足に対する企業の動向調査(2023年10月)|帝国データバンク

近年では、清掃や配膳、ゲストへの案内役などに「ロボット」を活用し、人手不足の解決につなげるホテルも見られる。

株式会社ミライト・ワンは、エレベータと連携し、自律的に昇降して移動するロボットの導入支援サービスを提供している。複数フロアの共有スペースを自動で清掃するため、清掃員の人手不足を補うことができる。

また遠隔地からロボットを操作し、ホテル内を案内するAIコミュニケーションロボットのtemiも提供しているので、ぜひ下記のサイトを参考にしてほしい。

エレベータ昇降できる自律移動ロボット
AI コミュニケーションロボット"temi"

関連リンク:IoTを活用したロボットの事例や補助金、導入時の注意点を解説

【目標12】持続可能な消費と生産

「持続可能な消費と生産」に関する目標12をホテルで実現するには、水や電気、食料などのムダを減らすことが大切となる。具体的には、以下の取り組みを行うと良いだろう。

 ● 館内照明のLED化
 ● お客様へ節水のお願い
 ● 事務作業で使う資料のペーパーレス化
 ● リネン交換の削減
 ● ブッフェの食べ残し削減
 ● 客室内のペーパーレス化
 ● ホテル敷地内に太陽光発電を導入し、再生可能エネルギーを活用

株式会社ミライト・ワンでは、ホテルでのペーパーレス化やDXを支援する「イータブ・プラス®」の導入を支援している。IoTを活用しながらお客様のおもてなしができるタブレットで、ホテル施設や観光案内などの情報を配信できる。

また太陽光発電を導入できるサービスも提供しており、ホテル内に設置することで再生可能エネルギーを利用できるようになる。詳細は以下のサイトを参考にしてほしい。

~宿泊業DX~ ホテル客室タブレット「イータブ・プラス®」
太陽光発電システムのエンジニアリング&サービス

関連リンク:カーボンニュートラルの実現を目指す企業の取り組みや具体例を紹介
「省エネ大賞」を受賞した沖縄の大型商業施設の省エネルギー施策とは

【目標14】海洋と海洋資源の保全

目標14の「海洋と海洋資源の保全」では、とくに海洋プラスチックのごみ問題が懸念されている。海洋プラスチックごみは増え続けており、海洋ごみの半分以上を占めている。

2022年4月、国内では「プラスチック資源循環法」が施行された。同法では、使い捨てプラスチックの使用規制や削減のための対策が決められている。

ホテルでは、ヘアブラシ、歯ブラシ、くし、かみそり、シャワーキャップ、ストローなどプラスチック使用製品について、使用の合理化が求められた。前年度における特定プラスチック使用製品の量が5トン以上の場合、同法の対象となる。

ホテル業界でも環境意識が高まるなか、対象事業者でなくてもアメニティに関して以下の対策を取るホテルが見られる。

 ● アメニティを部屋に置かず、必要な人のみフロントで渡す
 ● 有料化する
 ● 代替素材へ切り替える

ホテル業界がSDGsに取り組むメリット

ホテル業界がSDGsに取り組むメリット イメージ

SDGsへの対応はコストや手間がかかる印象があるかもしれないが、いくつかのメリットもある。ここでは、ホテル業界がSDGsに取り組む3つのメリットを紹介する。

 ● お客様へのPRとなる
 ● 優秀な人材を確保しやすくなる
 ● 地域経済の発展につながる

お客様へのPRとなる

SDGsへの対応は、ホテルを利用するお客様へのPRとなる。

オンライン旅行会社であるBooking.comの2023年の調査によると、日本の旅行者の56%が「よりサステナブルに旅行したい」と回答している。また80%が「よりサステナブルな旅行をすることは自身にとって重要」とも回答した。

しかし「サステナブルな旅行の選択肢の数が十分にない」と半数が回答していることから、SDGsのホテルでの取り組みをアピールすることで差別化につながり、宿泊先として選ばれる可能性が高まる。

またアゴダによる2023年の調査では、日本が「持続可能性と自然保護への取り組みが優れている」と評価され、1位となった。したがって、海外に対してもSDGsの取り組みを発信すれば、インバウンド需要が高まるだろう。

参考:
ブッキング・ドットコム、 2023年版「サステナブル・トラベル」に関する調査の結果を発表|Booking.com
Sustainable Impact Survey: Japan, Singapore, Korea top of the class|Agoda

優秀な人材を確保しやすくなる

SDGsに取り組むことで企業イメージが高まり、優秀な人材が集まりやすくなる。

2023年、リサピー®︎による「24卒就活生のSDGsに関する意識調査」によると、77.8%が「SDGs」を認知していた。さらに5人に1人が就職先のSDGsに対する姿勢や取り組みを重視していると回答。

9割以上が「SDGsへの取り組みは企業選びに影響する」とも答えていることから、人材不足が深刻化しているホテルでもSDGsに取り組むことで、優秀な人材確保につながるだろう。

参考: 【就活解禁間近!】24卒就活生の77.8%が「SDGs」について認知、5人に1人が「企業のSDGsへの取り組み」を企業選定軸でも重視|PR TIMES

地域経済の発展につながる

ホテルが地域経済の発展につながる取り組みを実施すると、持続的な経済成長や住みやすい街作りなど、SDGsの目標達成につながる。

具体的には、次のような取り組みが例として挙げられる。

 ● ホテルグループの地方出店による地域活性化
 ● 災害時の拠点としての活用
 ● 地域の魅力を伝えるために、地元の店舗と連携して特産品を販売

ホテル業界におけるSDGsの取り組みの具体例

ホテル業界におけるSDGsの取り組みの具体例 イメージ

ここでは、国内、海外のホテル業界におけるSDGsの取り組み事例を紹介する。

 ● プラスチックごみの削減|ヒルトン
 ● 貧困・飢餓への取り組み|グランドハイアット東京
 ● 連泊時の清掃のエコ化|ホテルグランヴィア京都
 ● 客室のアメニティを竹製、木製、バイオマス素材へ|帝国ホテル東京
 ● 地産地消の推進|ルネッサンスリゾートオキナワ
 ● スリッパを使い捨てから常設へ|リーガロイヤルホテル大阪
 ● 自然環境の保護に取り組む海外のホテル|ローズウッド サンパウロ

プラスチックごみの削減|ヒルトン

ヒルトンでは、環境に配慮した活動として使い捨てプラスチックごみの削減に取り組んでいる。

2030年までに廃棄物排出量を半分にまで減らすことを目標として掲げ、使い捨てプラスチック製品使用の合理化を図っている。具体的には、次の取り組みが挙げられる。

 ● プラスチック製ストローの全面廃止
 ● 宴会場においてペットボトルの使用廃止
 ● プラスチックの包装からペーパーバンドへ変更または撤廃
 ● レジ袋を紙袋へ変更 など

参考: 環境に配慮した活動|Hilton

貧困・飢餓への取り組み|グランドハイアット東京

グランドハイアット東京では、SDGsへの取り組みとして、環境やエネルギー資源への配慮、災害に強い設備の設置だけでなく、貧困・飢餓に対する活動も行っている。

「Clean the World」と呼ばれる、ホテルのアメニティをリサイクルする団体の活動に参画。ホテルから廃棄される使いかけの石鹸を発展途上地域へと送り、手洗いを習慣化して衛生状態を保つ手助けをしている。

参考: ホテルのSDGsへの取り組み(持続可能な開発目標)|グランド ハイアット 東京

連泊時の清掃のエコ化|ホテルグランヴィア京都

ホテルグランヴィア京都では、連泊時のリネン交換を行わないなど、清掃のエコ化を推進している。また、リネンの洗濯に使う洗剤の削減もあわせて進めている。

清掃のエコ化により、水や洗剤、エネルギーの使用量を減らし、環境保全に努めている。

参考: SDGsへの取り組み|ホテルグランヴィア京都

客室のアメニティを竹製、木製、バイオマス素材へ|帝国ホテル東京

帝国ホテル東京では、サステナブルなホテルを目指してSDGs達成に向けて取り組んでいる。2023年には、SDGsを実践する宿泊施設と認定され、国際認証を取得した。

取り組みのひとつとして、プラスチック使用量を年間で約13トン削減する目標を掲げている(2019年比)。客室で使用していたアメニティを竹製、木製、バイオマス素材へと変更することで、9割ものプラスチック使用量が削減されるという。

参考: サステナブルなホテルを目指して|帝国ホテル東京

地産地消の推進|ルネッサンスリゾートオキナワ

ルネッサンスリゾートオキナワではSDGsの実現に向けて取り組み、地産地消を推進している。地元の食材を積極的に活用して提供し、フードマイレージの削減を図っている。

さらに地元の農家で廃棄される予定の食材を使った商品開発にも取り組み、パイナップルを使ったタルトが大会で賞を受賞した事例もある。

参考: SDGsへの取り組み|ルネッサンスリゾート沖縄

スリッパを使い捨てから常設へ|リーガロイヤルホテル大阪

リーガロイヤルホテル大阪のサステナブルステイフロアでは、環境にやさしいアイテムを使用している。たとえば、使い捨てスリッパを常設へ変更したことで、2019年には年間約3.9万個分のごみ削減効果につながった。

そのほか、バスアメニティの個包装から詰め替え用へ変更するなど、資源保護対策を実施している。

参考: THE Natural Comfort FLOORS with サステナブルステイ|リーガロイヤルホテル大阪

自然環境の保護に取り組む海外のホテル|ローズウッド サンパウロ

海外のホテルもSDGs実現に向けた取り組みを行っている。ブラジルのローズウッド サンパウロでは、敷地内にソーラーパネルを設置し、再生可能エネルギーを利用すると発表した。

また、プラスチック製品の使用はゼロに抑え、館内の濾過システムで水を製造するなど、環境にやさしいホテルづくりを目指している。

参考: Rosewood São Paulo Opens Today|ROSEWOOD

まとめ

観光業は、あらゆる国や地域の経済発展において大きな役割を果たしている。ホテルは観光業に欠かせないため、ホテル業界がSDGsの実現に向けて積極的に取り組むことは、17の目標を達成するうえで重要といえるだろう。

国内のホテル業界では人手不足の深刻化が課題となっているが、当課題を解消するために、ロボットを導入するホテルが見られる。たとえば、株式会社ミライト・ワンが提供する「エレベータ昇降できる自律移動ロボット」や「AI コミュニケーションロボット"temi"」なら、清掃員やホテル案内に必要な人材を補うことが可能となる。

また、ペーパーレス化や省エネ化した設備運営に向けて、「イータブ・プラス®」や「予約管理業務自動化RPAソリューション」、「統合ネットワーク」も見てみてほしい。

ホテル内で太陽光発電システムを設置すれば、再生可能エネルギーを活用できるようになり環境負荷の低減につながる。「太陽光発電システムのエンジニアリング&サービス」で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてほしい。

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