拡大するスマート防災市場:国内2,000億円規模から世界12兆円市場へ

2026年7月6日

6月の「土砂災害防止月間」を迎え、気象災害の激甚化と自治体の人手不足が深刻化する中、AI・IoT・デジタルツインを活用したスマート防災の重要性が一段と高まっています。国内外で市場は急拡大しており、予測・監視・避難支援を高度化する防災DXは、地域の安全を支える中核的インフラとして進化し続けています。

スマート防災とは

スマート防災とは、 ICT・AI・デジタル技術を活用して、災害の予測・情報共有・避難支援を高度化し、自治体・住民・企業が迅速に対応できる仕組みのことです。
日本では内閣府のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)が中心となり、「スマート防災ネットワーク」の構築が進められています。

出典:戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)令和7年3月27日資料 イメージ
出典:戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)令和7年3月27日資料

国内のスマート防災市場

日本国内のスマート防災市場は、自治体の防災情報システム、IoTセンサー、AI解析、避難支援サービスなど防災DXを含む領域で、2024〜2025年時点で約2,000〜2,400億円規模の市場を形成しています。
特に、自治体向けの防災情報システムや緊急通知サービスの需要が大きく、安定した成長が続いています。AI・IoT・デジタルツインなどを活用した「防災テック」領域は成長率が高く、年率10〜15%で拡大しています。これにより、国内の広義の防災関連市場(ハード+ソフト+サービス全体)は、2025年に約3.5兆円、2030年には5兆円規模に達すると予測されています。
気象災害の激甚化や人口減少による自治体の人手不足を背景に、災害対応のデジタル化が急速に進んでおり、スマート防災は今後も継続的に拡大する分野と位置づけられています。

国内の防災情報システム市場規模推移・予測 出典:防災DX市場に関する調査を実施(2025年) 2025/09/09プレスリリース イメージ
国内の防災情報システム市場規模推移・予測
出典:防災DX市場に関する調査を実施(2025年) 2025/09/09プレスリリース

世界のスマート防災市場

世界市場においても、気候変動による災害の激甚化を背景に、近年急速に拡大しています。2024年時点の市場規模は 639億5,000万ドルに達しており、2030年には 1,294億2,000万ドルへと倍増する見通しです。予測期間中の年平均成長率(CAGR)は 12.3% と非常に高く、世界的に最も成長が期待される防災関連市場の一つとなっています。
市場拡大の主因は、異常気象の増加に伴う災害リスクの高まりにあります。洪水、山火事、地震、地滑りなどの多様な災害に対応するため、各国政府や自治体、インフラ事業者が、AIによる予測分析、衛星監視、地震センサー、リアルタイムデータ分析などの高度な防災技術を積極的に導入しています。
特に、アジア太平洋地域やラテンアメリカ、欧州の一部など、災害リスクの高い地域では、マルチハザード対応型のシステム需要が急増しています。北米は依然として最大市場であり、技術導入のスピードと投資規模が市場を牽引しています。こうした動きにより、世界のスマート防災市場は今後も継続的に拡大し、2030年に向けて「高度な監視・予測・即応」を実現する防災インフラへの投資が加速すると見込まれています。

スマート防災で特に成長する領域

スマート防災市場の中でも、今後特に成長が期待されるのは AI・IoT・デジタルツイン・ドローン・データ連携基盤といった先端技術領域です。矢野経済研究所の調査によれば、防災DXの将来展望において、これらの技術は「複数の災害種別に対応できる包括的サービスを実現する中核」として位置づけられており、自治体の人手不足や災害の激甚化を背景に導入が加速しています。
AIは、被害予測、避難判断支援、SNS解析によるリアルタイム情報収集などで活用が進み、災害対応の高度化に不可欠な技術となっており、特に洪水・土砂災害の予測モデルや、画像解析による被害把握などは導入が急増しています。
IoTセンサーは、河川水位、雨量、地盤変動、インフラの健全性などを常時監視する仕組みとして普及が進んでいます。リアルタイム観測データはAI分析と組み合わされ、早期警戒システムの精度向上に寄与しています。
さらに、近年急速に注目されているのが デジタルツインです。都市やインフラを仮想空間に再現し、災害シミュレーションや避難行動の最適化に活用されます。総務省の令和5年版情報通信白書において、デジタルツインは世界的に急成長する市場であり、2025年には3兆9,142億円規模に達すると予測されています。
ドローン・衛星によるリモートセンシングも成長領域で、被災状況の迅速な把握や広域監視に活用されており、特に通信インフラが途絶した地域での情報収集手段として重要性が高まっています。
これらの技術を統合する データ連携基盤(防災デジタルプラットフォーム) の整備が進んでおり、広域での情報共有や意思決定支援を可能にするほか、国の政策支援も強く、今後の市場拡大を支える基盤技術と位置づけられています。

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