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行政情報のオープンデータ化を推進する「データシティ鯖江」
福井県北部の中央に位置し、メガネフレームを主要産業とする鯖江市は、2010年代前半から「データシティ鯖江」と称して行政情報のオープンデータ化を推進してきた。この取り組みによって、市民協働でのアプリ創出が進み、バス乗客情報のリアルタイム公開、LoRa(低消費電力で広域をカバーする無線通信システム)を用いた河川水位の見える化など具体的なサービスが生まれ、官民協働の基盤づくりと県内への波及を牽引している。鯖江市の取り組みの概要と、今後の展開を見てみた。
公共機関が持つデータをインターネットで公開
全国の公共機関が持っているデータを、インターネットを通して使いやすい形で公開することで「透明性・信頼性の向上」「国民参加・官民協働の推進」「経済の活性化・行政の効率化」を図るオープンデータの試みは、国の方針としても明確に示されている。一方、実際にデータを公開するにあたっては、プライバシー問題や官僚機構の慣習との齟齬(そご)など課題も多い。
そうした中、もともと部局横断でのデータ整備と標準化、継続更新の運用体制、人材育成と市民・事業者による利活用促進という課題があった鯖江市では、市民との協働の街づくりのために、2010年3月に市民主役条例を制定。その中で、市民と行政の情報共有を規定し、広報誌やホームページなどに続く新しい情報共有の手法として、2次利用しやすい形でデータを公開する「データシティ鯖江」に取り組むことを決めた。
その後、同市は「オープンガバメントデイ@鯖江」「オープンデータハッカソン&LODチャレンジデーin 鯖江」「オープンガバメントサミットin 鯖江」などを実施。積極的に民間のアプリケーション開発を促進し、現在、市民や外部の企業・団体が活用できる約200種類のデータが公開され、すでに約250種類のアプリが生まれている。

(図1)鯖江市が公開しているオープンデータの一例(出典:福井県ホームページ)
民間企業の協力でオープンデータを利用したアプリを公開
鯖江市が公開したオープンデータは、民間企業の協力によって作成されたさまざまなアプリで活用されている。アプリは、パソコンでも利用できるWebアプリからスマートフォンで利用するものまで、幅広くユーザーが使える形式で提供されている。
例えば、2017年4月から運用を始めた「バス乗客リアルタイムオープンデータシステム」は、鯖江市内を走るコミュニティバス「つつじバス」の乗降者数を見える化するアプリだ。インターネットインフラを提供するさくらインターネットと、モバイルソフトウェアの企画・開発を行うjig.jpの協力によって開発された。バスの位置情報の他に、バスの乗客数や車いす利用スペースの空き情報なども分かるようになっている。
同じく、さくらインターネットとjig.jpの協力によって2018年7月から進められているのが、「河川水位計測システムの実証実験」だ。鯖江市は昔から水害が多いことから、防災対策の一環として取り組んでいる。システムでは、市内の河川6ヵ所に設置した水位センサーを利用して河川水位を取得。その情報をリアルタイムオープンデータとして公開し、Webアプリで情報を知らせる。センサーからのデータの送信についてはLoRaを活用することで、比較的安価にシステムが構築運用できる。

(図2)「バス乗客リアルタイムオープンデータシステム」(左)と「河川水位計測システムの実証実験」のサンプル画面(右)(出典:「データシティ鯖江」ホームページ)
若者が住みたくなる「ITのまち鯖江」を目指す
現在鯖江市では、政府が策定した「デジタル田園都市国家構想総合戦略」の実現に向けた地方版総合戦略として「鯖江市デジタル田園都市構想総合戦略」を、2024年から2028年の5年間を対象に策定している。さらに2025年3月14日には、「鯖江市デジタル田園都市構想総合戦略」と一体的にまちづくりを推進する、「めがねのまちさばえビジョン 2040」を発表している。
また、鯖江市は「オープンデータとITで都会的サービスが享受できるまち」を目指し、若者が住みたくなるまちの創造にも取り組んでいる。例えば、「創業スタートアップ支援事業補助金」では初期の設備投資に対して最大30万円が支払われたり、「子育て世代応援企業移住就業奨励金」では子育て世代応援企業に就職すると最大20万円が支払われる制度などがある。そうした取り組みを支援するためにもITで積極的な情報公開を行い、市民の誰もがITの恩恵を受け、より豊かな生活を享受できるような電子自治体となることを目指している。
一方で2025年10月からは、「鯖江市オープンデータダッシュボード」に鯖江市総合戦略の達成度データを公開。各目標の実績値や最終目標値、達成度について、グラフ表示で可視化できる。それらのデータをエビデンスとして、市の施策の立案や市民活動に役立てていくことで「ITのまち鯖江」を目指していく。

(図3)鯖江市総合戦略の達成度データの例
(出典:「オープンデータプラットフォーム」の「鯖江市 > 各種計画の達成度 > 総合戦略」)
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