電力逼迫とAI需要のはざまで進化するデータセンター戦略
- NTTファシリティーズ
- 取締役
データセンターエンジニアリング事業本部長 - 山田隆史
最近は、生成AIの普及によりデータセンターの需要が急増している一方で、電力消費の増大に伴い、電力供給待ちが長期化する課題も浮かび上がっている。そうしたなか、設計・構築・運用を一体で提供するデータセンターエンジニアリング事業を展開するNTTファシリティーズでは、洋上浮体型データセンターの実証実験を行うなど、新たな取り組みを開始している。そこで、データセンタービジネスを統括する株式会社NTTファシリティーズ 取締役 データセンターエンジニアリング事業本部長の山田隆史(やまだ たかし)氏に、データセンターの現状と今後について聞いた。

NTTファシリティーズ 取締役 データセンターエンジニアリング事業本部長 山田隆史氏
──地域や用途といった、最近のデータセンターのニーズを教えてください。
山田氏:東京近郊では千葉県の印西地区や多摩地区、大阪近郊などにデータセンターの計画が立てられることが多く、ニーズ自体は都市部に集中していると思います。用途としては、AIに対するニーズが高まっているのは間違いありません。それに伴い、サーバーの発熱が非常に高くなっており、そうした高発熱に対応できるデータセンターが求められるようになっています。
──データセンターが都市部に集中する理由は何でしょうか。
山田氏:エンジニアがアクセスしやすいという理由に加え、グローバルのデータセンター事業者が国内で建設を進める際、国際空港から近い立地を求める傾向があることも背景にあると思います。
──NTT東日本が東北・新潟地域へのデータセンター誘致を推進していますが、地方分散については、どのように考えていますか。
山田氏:非常に重要なテーマだと考えています。東京エリアは電力が逼迫しており、建設コスト高騰、建設長期化、建設リソース不足などの課題が顕在化しています。そのため、地方にデータセンターを誘致し、地産地消型で地域と共生する取り組みは必要です。データセンターから排出される熱を農業や養殖に活用できれば、地域活性化にもつながり、電力面でも、地方であれば調達にかかる時間やコストを抑えられる可能性があります。われわれとしても、地方分散のメリットをしっかり発信していく必要があると考えています。
──AI利用の拡大に伴い、電力調達は厳しくなっているのでしょうか。
山田氏:電力は以前から逼迫しています。少子化の影響で国内の総電力消費量は減少傾向にありますが、東京や大阪にデータセンターの需要が集中しているため、送電網が追いつかず、電力調達までの期間が長期化していると考えています。
──再生可能エネルギーの活用については、どのような取り組みを行っていますか。
山田氏:カーボンニュートラルの取り組みはデータセンター事業者が担う重要な役割のひとつです。NTTグループとしても、データセンターにおいて2030年までのカーボンニュートラル実現を目指しており、多くのケースで再生可能エネルギーが利用されています。
ファシリティ面においては、カーボンニュートラルに向けた取り組みの一例として、洋上データセンターが実現すれば、洋上風力発電の活用が可能になると考えています。さまざまな技術を高度化しながら、省エネ・再エネ技術を組み合わせた新たな提供価値を模索しています。
──AI向けGPUの発熱増加により、今後は、空冷では対応が難しくなるといわれていますが・・・
山田氏:その通りで、今後は液冷が不可欠になると考えています。ただし、すべてのデータセンターが液冷になるわけではありません。NVIDIAが提示している「Rubin」のような高発熱ラックには液冷が必要ですが、すぐに全面移行するわけではないと思います。液冷と空冷が混在しながら、徐々に液冷の比率が高まっていくと見ています。
ただ、実際に液冷を求めるお客様も増えており、われわれとしてもファシリティ側で液冷を提供できる体制を整えています。事業者が導入を希望すれば、既存の技術と組み合わせて設計することは可能です。
──コンテナ型データセンターについては、どう見ていますか。
山田氏:コンテナ型は、サーバーや電源、空調を一体化できるため、比較的低コストで導入できます。ただし、エンドユーザーが標準仕様だけで満足するケースは少ないと感じています。メガワット級の設備が増える中で、ある程度の拡張性が必要になると考えています。そのため、単なるコンテナではなく、工場で事前に製造し、現地で組み立てるプレファブリケーション型のニーズが高まると考えています。われわれも拡張性を持たせつつ標準化を進め、工期短縮とコスト削減に取り組んでいきます。
──日本郵船と洋上浮体型データセンターの検討を進めていますが、その狙いは何でしょうか。
山田氏:日本でのデータセンター開発においては土地の制約や電力調達の長期化、建設コストの増大・長期化、首都圏集中等さまざまな課題があります。洋上にデータセンターを設置することにより、洋上風力発電の活用や、海水冷却による省エネ、用地取得コストの低減、系統に依存しない電力調達が可能になるのではないかと考えています。
ただ、実際にサービスとして成立するかを判断するには、今後の検証が必要です。課題を一つずつ解決しながら、将来的な実現を目指していきます。

横浜市の横浜港大さん橋ふ頭に設置されている洋上浮体型データセンターの実証プラント
──データセンターは都市インフラといえる存在でしょうか。
山田氏:間違いなく、情報はインフラの一部になっています。データセンターも電力や水道と同様に、社会を支える基盤です。スマートフォンの普及により、データセンターは生活の質を高める重要な存在になっています。一方で、データセンターは高いセキュリティが求められ、秘匿性の高い施設であることから、これまでその存在や価値を十分に発信していませんでした。今後は、社会インフラとしての役割を、より明確に伝えていきたいと考えています。
昨年、地域と共生する省エネデータセンター構想を発表しました。これは、まだ構想段階ですが、これを実現するには、国や自治体、データセンター事業者の皆さまと共に話を進めていく必要があります。われわれは設計・企画を担う立場として、地域に貢献するデータセンターとはどのようなものなのか、そこから出てくる排熱をビニールハウスでの農業などにどうすれば活用できるのかということも含めて、これからいろいろ実現するために情報交換していく必要があると思っており、実際に多くの国の機関や自治体から問い合わせをいただいています。

地方共生型高効率データセンターイメージパース
建物自体も地域に貢献していけることを発信していきながら、インフラとしての立ち位置を見つけていきたいと思っています。
──他社との差別化はどこにあると考えていますか。
山田氏:データセンター建設では、電力、土地、コストといった課題が必ず発生します。われわれは長年の経験から、課題を事前に見極め、解決策を提示できる点が強みです。また、データセンターは大規模かつ高額なプロジェクトであり、計画通りに進まないケースも多いですが、確実なプロジェクトマネジメントにより、予算と工期を守る体制を構築してきました。
──今後、注力する領域を教えてください。
山田氏:液冷などの新技術については、海外の先進事例を踏まえながら、海外製空調機器メーカーとパートナーとして連携し、日本市場に適した形で提供していきます。技術と市場トレンドの両面で先行することが重要です。
また、建設コストはここ5年で倍近くに上昇しています。そのため、設備のパッケージ化を含めたプレファブ化を進め、現地での組み立てによる効率化を図ります。施工会社との協力体制を構築しながら、コスト削減と工期短縮を実現していきたいと考えています。
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