首都圏中心から地方の大規模施設へ移行するデータセンター投資

2023年9月4日

コロナ禍以降、オフィススペース縮小に伴うサーバルームの移転や、災害・地政学的リスクを踏まえたBCP拠点の設立、DX化推進によるクラウド需要の急拡大など、データセンターに対する需要は年々高まっている。当初は、マシントラブルがあってもすぐにユーザーが駆けつけられる都心型データセンターに需要が集まったが、それらの施設もそろそろ飽和状態になりつつある。そこで注目されているのが、地方に展開する大規模データセンターだ。

首都圏に集中するデータセンターは飽和状態に

総務省が2023年7月に発表した「2023年版情報通信白書」では、データセンターサービスの市場規模は2022年の?込値で前年比15.3%増の2兆275億円となっている。この状況に対して、データセンター専用ページを開設したCBREデータセンターソリューションズの小野 寛和(おの ひろかず)氏は、事業用不動産のプロバイダーとして運営するポータルサイト「PROPERTY SEARCH」の中で、「日本へのデータセンター投資が過熱している中で、投資家やデータセンター事業者から、データセンターの利用者のニーズや動向などについての問い合わせが増えている」と述べている。

「エンタープライズ」と呼ばれる従来型のデータセンターは、ラックやサーバルームの一画といった細かな単位で、多くの企業にスペースを提供している。こうしたデータセンターは、オフィスビルクラスの大きさの施設にも設営できるため、都心に置かれることが多い。ユーザーはデータセンターに預けたサーバにマシントラブルなどがあっても、都心ならばすぐに駆けつけることができる。総務省の資料でも、サーバルームの床面積ベースで換算すると、日本のデータセンターの8割超が東京圏・大阪圏に集中している状況であるという。

一方で、近年はさまざまな企業でDXが進んでいるため、都心におけるデータセンターの需要が急拡大している。CBREが2023年3月にまとめた調査によると、首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県)のデータセンターの平均稼働率は2022年末に約9割となり、新規の利用申込みを断っている事業者も多いという。

(図1)IDCが2022年8月29日に発表した「国内データセンターサービス市場予測」(出典:総務省のデータ集より引用)
(図1)IDCが2022年8月29日に発表した「国内データセンターサービス市場予測」
(出典:総務省のデータ集より引用)

地方に拡散する大規模データセンター

こうした状況から、昨今は郊外型のデータセンターに対する新規投資が拡大しているようだ。「ハイパースケールデータセンター(HSDC)」と呼ばれる郊外型のデータセンターは、主にクラウド事業者の利用を想定しているため、従来のデータセンターよりもサーバやネットワークなどのハードウェアに対して高いスペックが求められる。そのため、より広いサーバルームや大きな電力を確保する必要があり、それに応じて施設も大型となり、都心では土地の確保が難しい。また、ユーザーからサーバを預かることを想定しないHSDCならば、マシントラブルでユーザーがデータセンターへ直接アクセスすることもないため、都心から離れていても問題はない。

そもそも、都心など特定の地域にデータセンターの開発が集中するのは、事業継続性などの面でもリスクがあるため、データセンター事業者にとっても、開発エリアの分散は必須だろう。それを後押ししているのが、総務省の「デジタル?園都市国家インフラ整備計画」だ。同整備計画では、「2027年度末の光ファイバ世帯カバー率99.9%」の?標達成に向けた整備の中で、データセンターや海底ケーブル、インターネット接続点などのデジタルインフラを地方分散させる「デジタルインフラ整備基?」を実施。2022年5月13日から6月10日までデータセンター事業者の公募を行い、北海道石狩市や福島県白河市、島根県松江市など全国7カ所でデータセンター事業の実施を予定している事業者が採択された。

(図2)2021年度補正予算「データセンター、海底ケーブル等の地方分散によるデジタルインフラ強靱化事業」で採択されたデータセンター事業者(出典:総務省報道資料より引用)
(図2)2021年度補正予算「データセンター、海底ケーブル等の地方分散によるデジタルインフラ強靱化事業」で採択されたデータセンター事業者
(出典:総務省報道資料より引用)

データセンターが消費するエネルギーの地産地消にも期待

地方に置かれたデータセンターでは、データが発生する場所の近くにエッジコンピューティングによる処理を提供するMEC(Multi-access Edge Computing)を配置するとともに、MECで処理されるデータを統合して情報処理を行うデータセンターなどの整備が地域レベルで求められている。

また、遅延が許容される用途に利用されるデータセンターについては、 データを利用する地点との物理的距離について制約を受けないので、再生可能エネルギーをはじめとする脱炭素電源の活用などを含め、地方の適地への分散立地も可能だろう。

こうした、地域の特性を活かしたデータセンターについては、2030年頃に本格的な実用化が見込まれている。超低消費電力、超高速処理を特徴とするオール光ネットワーク技術の活用も視野に入れつつ整備を進めることで、データやエネルギーの「地産地消」の事業モデルを実現するなど、日本全体としてのGX推進などの効果も期待できそうだ。

「未来図メディア」メールマガジン登録

5G×IoTの最新情報やイベント・セミナー情報を
いち早くお届けします。

ミライト・ワンのソリューションに関するご質問、ご相談など
ございましたらお気軽にお問い合わせください。

ページトップへ