太陽光発電の自己託送とは?仕組みや要件からメリット・デメリットまで徹底解説
目次
- ▼1. 太陽光発電の自己託送とは
- ・2024年2月12日改正の「自己託送に係る指針」
- ▼2. 自己託送の主な利用要件
- ・自社が設置した発電設備を維持・運用していること
- ・需要家との間に密接な関係があること
- ・電気の最終消費者の需要に対する供給であること
- ・【例外】密接な関係がなくても、組合設立により自己託送が可能
- ▼3. 太陽光発電の自己託送を実施するメリット
- ・電気代の削減につながる
- ・CO2排出量を低減できる
- ・自営線方式より導入ハードルが低い
- ▼4. 太陽光発電の自己託送を実施するデメリット・注意点
- ・託送料金が発生する
- ・高精度な発電電力予測が必要になる
- ▼5. 太陽光発電の自己託送の事例
- ・【事例1】株式会社ソルコムが自己託送の実証運用を開始
- ・【事例2】四国通建株式会社が自己託送の仕組みを活用した、自社太陽光発電所建設を実施
- ▼7. まとめ
近年、企業が再生可能エネルギーを安定的に調達する方法として、太陽光発電の自己託送方式が注目されている。自己託送とは、一般送配電事業者のネットワーク設備を利用して、自社発電設備で発電した電気を、別の自社拠点へ送電する仕組みのこと。
本記事では、太陽光発電の自己託送の仕組みや利用要件、メリットやデメリット・注意点などをわかりやすく解説する。
太陽光発電の自己託送とは
太陽光発電の自己託送とは、自社(電力の需要家)が維持・運営する、敷地外(オフサイト)の発電設備で発電した電気を、一般送配電事業者の送配電設備を介して、自社が所有する別の拠点へ送電する仕組みのこと。
資源エネルギー庁は、自己託送を以下のように定義している。
自己託送とは 自己託送は、発電用又は蓄電用の自家用電気工作物及び一般用電気工作物(以下「自家用電気工作物等」という。)を設置する者が、当該自家用電気工作物等を用いて発電し、又は放電した電気を一般送配電事業者が維持し、及び運用する送配電ネットワークを介して、当該自家用電気工作物等を設置する者の別の場所にある工場等に送電する際に、当該一般送配電事業者が提供する送電サービスであり、平成25年に制度化されました。 引用:自己託送に関するQ&A|資源エネルギー庁 |
自己託送制度は、東日本大震災によって電力需給が逼迫したことを受け、企業が保有する発電設備による余剰電力を有効活用し、電力の安定した供給を目指すために制度化された。
通常、太陽光発電のような再生可能エネルギーを利用する際は、「再生可能エネルギー発電促進賦課金」が電気の使用量に応じて上乗せされる。しかし、自己託送は「自家消費型」の延長と捉えられ、徴収の対象となっていないため、企業にとっては電力コストを抑えられるメリットがある。
2024年2月12日改正の「自己託送に係る指針」
2024年2月12日、資源エネルギー庁より「自己託送に係る指針」が改正された。
改正に至る背景として、自己託送は「再生可能エネルギー発電促進賦課金」が徴収されない点に着目し、他社の電力設備から電気を調達し、他社に供給している実態が明らかになった点があげられる。
具体的には、発電設備を維持する需要家が名義上は管理責任の役割を果たし、自己託送の要件を満たしているが、実際はリース契約で外部に委託する事例が見られた。また、需要家が送電した電気を、自社で消費せずに関係のない他社に供給している事例もあることがわかった。
そこで、2024年2月の改正によって利用要件が厳格化され、リース契約や他者に供給する方式による自己託送は認められなくなった経緯がある。改正後の主な利用要件について、次章で見てみよう。
自己託送の主な利用要件

ここでは、自己託送の主な利用要件として、次の3つを解説する。
● 自社が設置した発電設備を維持・運用していること
● 需要家との間に密接な関係があること
● 電気の最終消費者の需要に対する供給であること
一つずつ、詳しく見ていこう。
自社が設置した発電設備を維持・運用していること
まずは、自社が設置した発電設備を維持・運用している場合に限り、自己託送に該当する点が挙げられる。つまり、他社が設置した発電設備を譲渡またはリース契約による貸与などによって維持・運用する場合は、自己託送に当てはまらない。
また、自己託送の契約者が受電設備を保有しているにもかかわらず、電気の使用者が他者となっている場合も、本来の制度の目的から外れていると考えられる。
需要家との間に密接な関係があること
発電設備を維持・運用する需要家と密接な関係がある場合、自己託送と認められる。ここでいう「密接な関係」とは、以下の関係を指す。
● 会社法に規定される親会社と子会社の関係
● 過半数の役員の派遣がある関係
● 長期にわたり継続的に取引などが行われている関係 など
電気の最終消費者の需要に対する供給であること
自己託送により電気が供給されて、最終的に電気を消費する者と需要家の間にも、密接な関係が必要となる。
改正前に、自己託送による需要場所(ビルなど)にテナントが入居していて、各テナントに電気を供給している事例があった。電気の最終消費者である各テナントが、需要家と密接な関係がない場合、原則として自己託送は認められない運びとなった。
【例外】密接な関係がなくても、組合設立により自己託送が可能
上記のように、自己託送の利用要件には、親会社と子会社の関係や長期間にわたる継続的な取引など、密接な関係が必要となる。しかし、資本関係がなくても、組合を設立して要件を満たすことで密接な関係とみなされ、自己託送が認められるケースもある。
要件として、長期にわたり組合が存在すると見込まれる点や、自己託送のために新たに組合を設置することなどが含まれる。
太陽光発電の自己託送を実施するメリット

太陽光発電の自己託送を実施する3つのメリットを見てみよう。
● 電気代の削減につながる
● CO2排出量を低減できる
● 自営線方式より導入ハードルが低い
電気代の削減につながる
太陽光発電の自己託送によって、自社が運用する設備で発電された電気を使えるようになり、電気代の削減につながると期待できる。
また、自家消費のため「再生可能エネルギー発電促進賦課金」の上乗せがない点もメリット。再生可能エネルギー発電促進賦課金の単価は毎年国によって見直されており、増加傾向にある。しかし自己託送によって、賦課金の負担がなくなるためコストを抑えられるだろう。
さらに、温室効果ガス(GHG)排出量削減の観点からも、太陽光発電の自己託送は有効な手段といえる。GHGは地球温暖化の要因といわれており、企業はGHGの排出量を削減していくよう求められている。
GHGの排出量は、スコープ1、2、3のカテゴリーに分類され、以下のように対象が異なる。
太陽光発電の自己託送によって、主にスコープ2におけるGHGの削減に貢献すると期待できる。具体的には、電力会社から調達した化石燃料の焼却による電力を減らして、GHGの間接排出量削減に貢献できるだろう。太陽光発電の自己託送を行うことで、企業の脱炭素化に関する目標の達成を後押しするといえる。
スコープ1、2、3の詳細については、以下の記事で解説している。合わせてチェックしてみてほしい。
関連リンク
カーボンニュートラルとサプライチェーンにおける3つのスコープ(スコープ1,2,3)とは
CO2排出量を低減できる
自己託送によって、再生可能エネルギーの一つである太陽光発電で作った電気を利用することで、GHGの一要素であるCO2排出量を低減できる。再生可能エネルギーとは、自然界に存在するエネルギーのこと。化石燃料のように利用時にCO2を排出しない点が特徴の一つとして挙げられる。
また、再生可能エネルギーは枯渇する心配がなく、蓄電設備と組み合わせて使用することで、電気の安定供給が実現しやすい。
自己託送によって、太陽光発電設備が設置されている場所だけではなく、別の場所にある子会社などに供給できれば、グループ全体で脱炭素化を実現しやすくなるだろう。
再生可能エネルギーについては、以下の記事で詳しく解説している。合わせてチェックしてみてほしい。
関連リンク
再生可能エネルギーとは?種類やメリット・デメリット、導入方法を紹介
また、株式会社ミライト・ワンは、太陽光発電システムの導入支援サービスを提供している。詳細は以下のサイトから見てみてほしい。
自営線方式より導入ハードルが低い
自己託送方式は、自営線方式よりも導入ハードルが低い点もメリットとしてあげられる。
自営線方式とは、敷地外にある需要家の太陽光発電設備によって発電された電力を、自営線と呼ばれる送電線を通常の電力系統とは別に整備して、自社の施設に供給する仕組みのこと。自営線整備のためにコストがかかり、維持管理も必要になる点が自己託送との違いとなる。
自己託送の場合には、一般送配電事業者が用意する送配電設備を利用できるため、導入ハードルが低いといえるだろう。
太陽光発電の自己託送を実施するデメリット・注意点
太陽光発電の自己託送を実施するデメリット・注意点を紹介する。
● 託送料金が発生する
● 高精度な発電電力予測が必要になる
託送料金が発生する
自己託送では、一般送配電事業者のネットワーク設備を利用するため、託送料金が発生する。一般送配電事業者は、電力の需要と供給のバランスを調整したり、電力系統の電圧などを運用したりするなど、ネットワーク設備の保全活動を行っている。
自己託送によって「再生可能エネルギー発電促進賦課金」の上乗せはないが、ランニングコストがかかる点に留意が必要である。なお、託送料金は事業者によって異なるので、利用前に確認しておこう。
高精度な発電電力予測が必要になる
自己託送を実施する際、30分ごとの発電計画と需要計画を電力広域的運営推進機関へ提出する必要があり、高精度な発電電力予測が求められる。しかし、天候が急変し、計画通りの電力量を供給することが困難になる可能性もある。
予測と実績に差異が生じると、発電側と需要側に一般送配電事業者へ料金の精算が発生するため、インバランスが起きないように慎重な計画が必要となる。
太陽光発電の自己託送の事例
続いて、太陽光発電の自己託送を実施した事例を紹介する。
● 【事例1】株式会社ソルコムが自己託送の実証運用を開始
● 【事例2】四国通建株式会社が自己託送の仕組みを活用した、自社太陽光発電所建設を実施
【事例1】株式会社ソルコムが自己託送の実証運用を開始
再生可能エネルギーの導入を推進するミライト・ワン グループの株式会社ソルコムは、広島県に位置する中国通信資材の物流倉庫屋根の上に太陽光発電設備を設置。別の場所にあるソルコム広島支店ビルへ電力を供給する、自己託送の実証運用を開始した。
予測と実績に差異が生じないように、発電場所における発電量と、ソルコム広島支店ビルにおける電気の消費量の予測精度の向上を目指す。詳しくは、以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてみてほしい。
関連リンク
再生可能エネルギーの導入推進に向けた「自己託送」の実証運用をミライト・ワン グループで開始
【事例2】四国通建株式会社が自己託送の仕組みを活用した、自社太陽光発電所建設を実施
四国通建株式会社は、自己託送の仕組みを活用した太陽光発電所の建設プロジェクトを、愛媛県今治市でスタートした。これは、斜面が多く売却が困難であった24,300㎡もの遊休地に自営太陽光発電所を建設し、自己託送によって電力を本社、支店、営業所などで使用する建設プロジェクトである。
本プロジェクトを通じて自己託送に関するノウハウを蓄積し、今後クリーンエネルギーの導入を希望するお客様に対してサービスを提供することで、持続可能な社会の実現を目指している。本プロジェクトに関して、詳しくは以下の記事で解説している。ぜひチェックしてみてほしい。
まとめ
自社で維持・運用し、離れた場所の発電設備で発電した電気を、一般送配電事業者の送配電設備を介して送電し、自社グループ内で消費する太陽光発電の自己託送は、電気代だけでなく、CO2排出量の低減にもつながる。脱炭素化を目指す企業にとって、太陽光発電による電力の活用は重要な取り組みの一つとなるだろう。
株式会社ミライト・ワンは、これまで情報通信設備建設や総合設備事業で培った技術力に基づき、太陽光発電システムの設計や調達、構築、保守までをトータルで提供している。加えて、2021年度から発電事業に本格的に取り組み、発電事業者として再生可能エネルギーを提供している。詳しくは以下のサイトで紹介しているので、ぜひチェックしてみてほしい。
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