山形県大蔵村など、小規模自治体の取り組みに関する最新トレンド

2025年12月1日

2025年現在、小規模自治体は、財政課題を抱える中、標準化・デジタル化による効率化が加速しており、DX推進とスマートシティ構想が中心トレンドとなっています。
一方で、地方の小規模自治体では、予算やリソースが限られていることが多く、DXに取り組むことが難しいと感じている自治体も少なくないでしょう。時代の流れに乗り遅れないためには、DXの推進は避けて通れません。総務省も2020年12月に「自治体DX推進計画」を策定し、全国の自治体におけるデジタル化を強力に後押ししています。

小規模自治体DXの課題

小規模自治体のDX推進には、様々な構造的課題が存在します。第一に人材不足と専門知識の欠如が挙げられます。ITやDXに精通した職員が少なく、外部人材の確保も困難で、自治体内部でのDX推進をリードする人材が不足しているのが現状です。また、予算についても、システム導入や研修にかかる費用が高く、財政的に余裕がないことが多くあります。その他、住民や議会にDXの必要性が伝わりにくく、説明責任や合意形成に時間がかかること、部署間連携が不十分で、縦割り構造が障壁になること、既存システムがブラックボックス化し、DXの足かせになっていること等が課題として挙げられます。
これらの課題を乗り越えるには、都道府県との連携や低コスト施策の導入が鍵です。また、成果を可視化し、住民サービス向上の実例を示したり、推進体制の整備や意識改革を行ったりすることが不可欠です。

デジタル田園都市国家構想交付金とは

デジタル田園都市国家構想は、2021年に岸田内閣の下で始動した構想で、デジタル庁で推進しています。デジタル技術を活用して地方の社会課題を解決し、全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会を目指す国家的な取り組みです。
デジタル田園都市国家構想交付金は、デジタル田園都市国家構想推進のため、地方活性化とデジタル化の両立を目指して設けられた補助金制度です。
この制度の大きな特徴は、単なるインフラ整備にとどまらず、住民サービスの利便性向上、業務の効率化、デジタル人材の育成、地域経済の自立支援など、地域の実情に即した課題を「デジタル技術を使うこと」で解決するという視点が重視されている点です。
交付対象は地方自治体が中心ですが、複数自治体の連携や、民間事業者・大学・非営利団体との協業を組み込むことで、より実効性のあるプロジェクトと認められ、採択されやすくなります。他の地域でも応用可能な事例として機能することが期待されており、「持続可能性」と「汎用性」が必要です。そのため、事業の構築段階から成果の波及を意識する必要があります。
小規模自治体では、限られた人材や予算の中で、デジタル技術を活用した効率的な行政運営や住民支援が求められており、交付金はその後押しとなっています。

デジタル田園都市国家構想交付金の活用事例

~デジタル地域通貨「くらポ」で人流回復を目指す山形県大蔵村~
大蔵村は山形県のほぼ中央に位置し、人口約3,000人の小規模自治体です。開湯1200年の歴史を誇る「肘折温泉郷」、日本の棚田百選に選ばれている「四ヶ村の棚田」などの観光資源があり、山林面積が全体の約85%を占めています。
大蔵村は、コロナ禍で激減した人流の回復を目指し、デジタル田園都市国家構想交付金(TYPE-X)を活用して、デジタル地域通貨「くらポ」を導入、従来は紙だった地域振興券のデジタル化、村営バスのキャッシュレス化を実現しました。

【地域通貨「くらポ」】
「くらポ」は、大蔵村の電子地域マネーです。これまで紙ベースで行われていた村内の商店のポイントをデジタル化することや、肘折温泉への観光客増加の目標を持ってスタートしました。「くらポ」へは、クレジットカードで直接チャージする方法のほか、村内のポイント給付イベントに参加することで、残高を増やすことができます。
「くらポ」の商品設計やメニュー考案は村が行い、実際のシステム構築はNTTグループが担当し、デジタル地域通貨プラットフォーム及びGPSを活用したバス運賃計算システムを提供、導入に向けた各種支援を行いました。

出典:「大蔵村 OKくらポ」 Webサイト イメージ出典:「大蔵村 OKくらポ」 Webサイト

これまで、大蔵村では、500円券を束ねた分厚い冊子の地域振興券を発行していましたが、使える店舗が少なく、利用実態も把握しにくい状況でした。「くらポ」を活用してデジタル化することにより、利用状況の把握やペーパーレス化につながっています。また、利用者も「くらポ」1ポイントを1円として利用できるため、端数などを気にすることなく便利に使えるようになりました。

村営バスには、「くらポ」を用いたキャッシュレス決済「ゆけむりPass」を導入しています。それぞれ、利用者登録を行い、「くらポ」の利用者登録情報を、「ゆけむりPass」に入力すると、2つのサービスをつなげることができます
乗車する際は、「ゆけむりPass」の画面をスマートフォンに表示させ、ゆけむりラインバスの料金箱の上のQRコードを読み取ります。ゆけむりPassの仕組みは、バスの位置情報を乗車するときに取得し、運賃を自動で計算するものです。自分が乗車したバス停を自動的に検出し、乗った場所をスマートフォン内に記録します。
降車する際も、もう一度料金箱上のQRコードを読み込みます。乗車したときと同様に、位置情報が取得され、運賃が自動的に計算されます。チャージしたお金で支払いされ、精算の画面に「くらポ」の支払い画面が表示されます。もしも残高が足りない場合は再度チャージするか、不足分を現金で支払うことができます。

大蔵村では2026年度の新庁舎に移転する計画を進めており、これを機に住民の暮らしをより豊かにするデジタル事業をさらに推進していく予定です。

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